「プロのストライクゾーンはルールブック通り」“高校野球ストライク”は実際あるの?…現役審判員が語る「誤審問題」ホントのトコロ

AI要約

審判員の視点から、高校野球におけるジャッジの重要性や難しさについて語られている。

ジャッジの仕事に対する考え方や、人間らしさを尊重したプレーの重要性が強調されている。

また、ストライクゾーンの広さやアンパイアの役割についても、詳しく説明されている。

「プロのストライクゾーンはルールブック通り」“高校野球ストライク”は実際あるの?…現役審判員が語る「誤審問題」ホントのトコロ

 連日熱戦の続く真夏の甲子園。球児たちの全力プレーに胸が熱くなる一方で、今大会も度々話題になるのが微妙なジャッジを巡る“誤審問題”だ。先のパリ五輪でも多くの判定が物議を醸しただけに、高校球児たちの晴れ舞台でも侃々諤々の議論が巻き起こっている。そんな喧騒を現役の審判員はどう見ているのか。話を聞いた。《全2回の2回目/最初から読む》

「基本、いちばん近い位置で、定点から見てますから、アンパイアのジャッジがいちばん正しいんです」

 妙に声を張らず、おだやかな語り口で話してくれたのは、ある自治体で高校野球のジャッジをしている現役審判員の方だ。その声は自信と矜持に満ちていた。

「定点」とは、動かずに止まって見ているという意味だ。

「但し、人間のやることだからミスはある。これは僕だけの思いですけど、人間のやることなんだから、ジャッジについて非難や否定があるのも、ある意味当然。覚悟っていうと、大げさになりますけど、それが嫌だったら、ジャッジは機械に任せればいい。正確さなら、今の機械のほうが上かもしれませんからね」

 お隣・韓国プロ野球での現状を教えてくださった。

「向こうでは、AIにストライク、ボールを判定させて、それを球審がイヤホンで聞いて、ストライク! ボール! って、やってるらしいですよ」

 不勉強な私には、初めて聞く話。ビックリした。

「日本でも、映像で確認する方法が、プロ野球だけじゃなくて、本来、すごく伝統を重んじるはずの大相撲にも導入されている。それなら、高校野球でも……って、それが時代の流れなんでしょうけど、僕はちょっと違うんです」

「野球という競技は、極めて人間くさいスポーツではないか」という。

「野球って、詰めて考えたら、いかに人間(アンパイア)に『ストライク! 』って手を上げさせるか、『アウト! 』って手を上げさせるのか。そこだと思います。いかに、人間に対して説得力のあるプレーができるのか。そこが野球の奥深くて、いちばん面白いところだと思うし、そういうことを追究することが、先々の社会生活にすごく役立つと思うんです」

 そんな“ジャッジの機微”が最も出るのが高校野球特有のストライクゾーンなのだという。SNSなどでもよく話題になる「甲子園ストライク」に関しても、審判員の方はこんな風に説明してくれた。

「ルールブック通りということであれば、やっぱりプロ野球のストライクゾーンがいちばん正しいと、僕は見ています。プロのストライクゾーンがいちばんルールブック通りで、社会人野球、大学、高校って、少~しずつ広くなっている。特に、左ピッチャーのクロスファイアー。右バッターの内角に食い込むボールなんて、かなり広い。そう思いませんか」

 実際にそう見えると、その審判員の方は言いきる。

「18.44メートル向こうの小さなゾーンにストライクをきめるって、すごく難しい行為ですから、そのレベルの技量によって、ボーダーラインが少しずつ違うって、むしろ合理性があると思うし、選手の上達のためにも悪いことじゃない」

 これも、僕が勝手に考えていることなんですが……ときり出してきた話が、興味深かった。

「アンパイアの仕事について、もっとメディアが注目して、取り上げてくれてもいいんじゃないですか。同じグラウンドで、選手たちと一緒にゲームを進行させて、投げる瞬間、打つ瞬間は選手たちが主人公ですけど、ジャッジの瞬間は、自分たちアンパイアが<主役>なんです。

 もちろん、微妙なジャッジをうんぬんするのも構わないし、逆に、正確なジャッジばかりの試合があったら、『お見事! 』とほめてもらったり。映画の世界にもあるじゃないですか、主演男優賞と助演男優賞っていうのが」

 見られている意識。

 良くも悪くも、それが技量の上達につながるのではないか。「甲子園」の経験もないのに、なまいきなことをすみませんと、一歩退いたところからその審判員の方は「提言」をしてくださった。