初の決勝へ扉開けた「バックホーム」 関東一・飛田優悟 夏の甲子園

AI要約

関東一が神村学園を2-1で破り、決勝進出を果たした試合。試合の決定的瞬間は関東一の飛田優悟が見せた絶妙なバックホームプレーで、相手ランナーを刺して勝利を決定づけた。

飛田は自らの守備位置を変え、セーフティーバントに備えていた。神村学園の玉城功大が放った打球が内野を破り、走者が三塁を目指すが、飛田の正確な送球が相手ランナーを刺し、勝利をもぎ取った。

飛田は送球に悩んだ過去を持ち、練習でも不安定なプレーをしていたが、指揮官の言葉を受け、覚悟を決めてプレーに臨んだ。外野手としても自信を持ち、ビッグプレーでチームを決勝進出に導いた。

初の決勝へ扉開けた「バックホーム」 関東一・飛田優悟 夏の甲子園

 ◇高校野球・夏の甲子園準決勝(21日)

 ◇○関東一2―1神村学園●

 1点を巡る試合は絶妙な「バックホーム」で決まった。関東一の中堅手・飛田優悟の肩が勝敗を分けた。

 ハイライトは、1点リードで迎えた九回の守備だった。2死一、二塁。一打で同点、長打が出れば逆転の可能性もある場面だ。飛田は思考をめぐらせていた。「相手の投手がすごく良いので、1点もあげたくない」。定位置よりもやや前寄りに守備位置を変えた。

 神村学園の打席は代打・玉城功大。1ボール2ストライクからの5球目、外角の直球をはじき返した打球は、二遊間を破った。二塁走者の岩下吏玖は、相手投手がストライクゾーンに球を投げた時点でスタートを切る「ストライクゴー」で走り出した。三塁コーチャーは勢いよく腕を回し、岩下も迷いなく三塁ベースを蹴った。

 一方、関東一の飛田は「絶対に(三塁を)回ると思った」と目線の先は捕手のミットだけだった。イレギュラーを恐れず打球に突っ込んだ。「刺せる」。ノーバウンドのストライク返球を受けた捕手の熊谷俊乃介が、ヘッドスライディングする相手の岩下にタッチした。判定はアウト。「最初はジャッジが分からなくてやばいと思ったが、ホッとしました」という飛田。甲子園が大歓声に沸いた。

 紙一重のプレーに神村学園の小田大介監督も「あそこは回すべき場面。0・1秒でも速くスタートを切れて、70センチでも稼げていればセーフだったかもしれないが、相手が一枚上手だった」と脱帽するしかなかった。

 関東一がこだわってきたのが守備だ。だが、飛田は送球に悩んでいた時期があったという。前日の練習でも送球をそらす場面が目立った。この試合でも米沢貴光監督は、四回の先制点を許した中前打での飛田の動きを見逃さなかった。「(前への)詰めが怖がってしまっているように僕には映った」。六回ぐらいで飛田を呼んだ。「怖がらず、詰めていいぞ。思い切っていかないと」。米沢監督の言葉に飛田の覚悟は決まった。

 今大会で内野陣の好守がチームを救ってきたが、飛田も「外野のファインプレーは流れを変えられる。だから外野手も(内野手に)負けないように練習してきた」と強調する。くしくも1996年8月21日は、決勝で熊本工と対戦した松山商(愛媛)の右翼手による本塁ダイレクト送球の「奇跡のバックホーム」があった日。関東一は外野手のビッグプレーで初の決勝への扉を開けた。【吉川雄飛】