白井元調教師と学ぶ血統学【82】サイレンススズカの秘密は毛色にあった!? 伝説の1998年毎日王冠にも言及

AI要約

サンデーサイレンス産駒の3世代目であるサイレンススズカについて、馬体や血統、走破距離などが議論された。

サンデーサイレンスと違った毛色を持つサイレンススズカには、ミスワキの影響が強く表れていると指摘された。

競馬ファンに、血統や毛色からどのように競走馬の特性を推測するかを楽しんでもらおうとする発言があった。

白井元調教師と学ぶ血統学【82】サイレンススズカの秘密は毛色にあった!? 伝説の1998年毎日王冠にも言及

【白井元調教師と学ぶ血統学「温故知新」】

 元JRA調教師の白井寿昭氏に指南役をお願いし、さまざまな角度から血統を考える連載の第82回。日本競馬のレベルを大きく引き上げた大種牡馬・サンデーサイレンス。同馬が輩出したGⅠ馬の血統、成績や馬体などを確認しながら、その足跡を改めて振り返っていく。

 進行は東スポ競馬・関西地区本紙担当であり、白井氏との親交も深い松浪大樹記者。これまで以上に興味深い話の数々を堪能していただきたい。(※2023年5月18日公開)

 松浪大樹(東京スポーツ記者=以下、松浪)今週もサイレンススズカをテーマに話をしていきます。サンデーサイレンス産駒の3世代目。

 白井寿昭氏(元JRA調教師=以下、白井)今週は馬体のチェックから始めるんやったな。

 松浪 そうですね。よろしくお願いします。

 白井 これまでの馬たちは、種牡馬になってからの馬体をチェックしてたやんか? でも、この馬は現役時代の写真しかない。当たり前のことやけどさ。

 松浪 そうなります。なので、比較はつきにくいかもしれませんね。現役時代のほうがスラッと見せるでしょうし。

 白井 そうやね。でも、それなりに比較はできると思うよ。

 松浪 これが現役時代の写真なわけですけど…。改めての印象は?

 白井 素晴らしいわ。いい馬や、ホンマに。もったいないなあ、ホントにもったいない。

 松浪 先生、そればっかりですね(苦笑)。

 白井 しょうがない。それしか言葉がないんやから。

 松浪 これまでの連載でもそうでしたが、先生は常日頃から「サンデーサイレンスの系統は、サンデーサイレンスに似ているほうがいい」と言っていました。でも、サイレンススズカはちょっと違いますよね? 毛色も栗毛ですし。

 白井 そうやな。サンデーに似ていたジェニュインとかとは違う。

 松浪 でも、そこがまた魅力的に思えてしまう。隔世遺伝が強いのかな、とか。

 白井 でも、これは母の父がミスワキやで。ミスワキは栗毛やったろ?

 松浪 はい、そうです。ミスワキ自身は栗毛でした。

 白井 つまりはミスワキの影響が強い馬ということ。わかりやすいわ。

 松浪 母のワキアが鹿毛。ミスワキの隔世遺伝ということですね?

 白井 本当はさ。青鹿毛と鹿毛の配合というたら、大体は黒っぽい馬が出るのが普通やねん。でも、これは栗毛。本来は出ない毛色が出てる。ああ、ミスワキか。そうなるよな。配合を見るだけで終わりにするのでなく、血統表を見てから毛色を見てさ。もちろん、馬体も見てほしいけど、そのようにして、血統の影響がどこにあるのか? それを考える。そういう楽しみね。これを競馬ファンの人にも知ってほしいし、やってほしいわ。

 松浪 難しいことではないですもんね。毛色の確認だけなら。

 白井 サイレンススズカはミスワキが出とる。なるほどね、ミスワキはスピードなんやな。そういう考え方も知ってね。

 松浪 なるほど。逆の見方でもいいんですよね?

 白井 血統からいろいろなイメージを持てる。競馬の楽しみが広がる。馬券を買って当てる。それだけでなくてね。

 松浪 サイレンススズカに話を戻しましょうか。ミスワキの影響が強く出ると、切れよりもスピードの持続力が武器になる印象です。ちょっと米国っぽいというか、そんなタイプの馬になる。

 白井 そうやな。でも、この馬はちょっと特別。めちゃくちゃスピードがあったもん。ミスワキのそれよりも強烈やった。

 松浪 この馬体を見ると、寸がそれなりに詰まっているというか、長い距離に適性があるようには思えないのですが、2000メートルは楽々とクリアしていました。単純に心肺能力が優れていたのでしょうね。

 白井 それは間違いないな。最も長い距離は2200メートル? 宝塚記念を勝ってたもんな。

 松浪 はい。でも、3歳春のプリンシパルSも勝っているんですよ。あのころのプリンシバルSは2200メートルでした。次のダービーはダメでしたけど(※9着)。

 白井 そうか。それは知らんかったな。

 松浪 前にも話が出ましたけど、多くのファンが持っているサイレンススズカのイメージ。それは古馬になってからのものと思うんですよね。武豊騎手が乗って、ハナに行くようになってからの。

 白井 そうやね。僕もそう。

 松浪 でも、競馬の形が整わず、競走馬として本格化する前の段階で2200メートルの距離を勝っていた。これは結構重要なことではないかと思うんですよ。仮に天皇賞(秋)を勝っているようなら、陣営はジャパンカップの参戦も考えているようでしたし、そこを勝っているようなら、ブリーダーズカップ・ターフへの遠征もありえた…と僕は思っています。2400メートルの距離、先生は克服可能だったと思われますか?

 白井 克服したと思うね。あまりにもスタミナが必要なレースはどうかと思うけど、最近のレースは違うやんか。

 松浪 そうですね。ダービーやジャパンカップでも必要なのはスピードという気がします。

 白井 そういう状況なら、この馬の強みが生きてくると思う。こなしたんとちゃうかな。

 松浪 確かに。アーモンドアイとかを見ているとね。スピードが全てのような感じです。2400メートルの距離でも。