五輪で乱立の「美人アスリート」報道…実際の選手はどう感じた? 走高跳・高橋渚(24歳)が語る“知ってもらう重要性”「入り口は様々でも…」

AI要約

パリ五輪で金メダル数が過去最多となる大会が開催される中、多くのアスリートが活躍したが、その中で舞台に立てなかった選手もいる。女子走高跳の高橋渚選手もその1人で、ビジュアル面を強調したメディア報道に悩みつつも、自身の存在を知ってもらうことの重要性を語っている。

高橋選手は世界ランキングで「あと1人」のところまで迫ったが、大舞台には届かなかった。身長や容姿が取り上げられることもあったが、彼女自身は結果以上に自らを理解してもらいたいと考えている。

報道には様々な側面があり、ビジュアルだけでなく、選手の努力や背景も知ってもらうことの重要性が高橋にとって大きい。競技を通じて応援してもらうためにも、選手個人の価値を理解してもらうことが求められている。

五輪で乱立の「美人アスリート」報道…実際の選手はどう感じた? 走高跳・高橋渚(24歳)が語る“知ってもらう重要性”「入り口は様々でも…」

 連日、さまざまな競技のメダル獲得に沸いたパリ五輪。日本中を熱狂の渦に巻き込んだ各選手の頑張りは、多くのファンにとって得難い経験となった。一方で、その夢の舞台に惜しくも立てなかったアスリートたちも数多くいる。女子走高跳の高橋渚選手もそのひとりだ。世界ランキングであと1人のところまで迫ったが、大舞台には届かなかった。現在は来年の東京世界陸上に向けてトレーニングを積む24歳に、五輪関連で目立った“報道スタイル”についても聞いた。《NumberWebインタビュー全3回の3回目/最初から読む》

 海外大会では過去最多となる金メダル数を獲得したパリ五輪。

 本大会はもちろん、そこに至るまでの各競技での選考大会の様子も含め、メディアでも連日アスリートの頑張りが報じられた。

 そんな中で目についたのが、競技や選手を目にした際のSNSでの反応やコメントをベースにした「美人アスリート」「イケメンアスリート」といったビジュアル面をトピックにした記事の多さだ。

 こういった記事に対しては、それまで選手のことを知らなかった人たちに対してライトなファンの間口が広がるメリットがある一方で、選手である以上「競技結果で見てほしい」という主張を持つアスリートも多い。

 陸上競技の女子走高跳で日本選手権3連覇の実績を誇る24歳の高橋渚(センコー)も、今季ここまで同様のテーマで記事に取り上げられるケースが多かった。

 今回のパリ五輪では、世界ランキングで「あと1人」のところで大舞台に届かなかった高橋だが、173cmの長身とも相まって、メディアでは記録以上にルックス重視の取り上げ方をされることもあった。走高跳が競技特性上、身長が高く手足が長いいわゆる「モデル体型」の選手が有利な競技ということもあっただろう。

 自身が目指していた舞台に立てないことが決まった悔しさの中で、競技とは違った角度から報じられることは、本人としても様々な葛藤があったのではないだろうか。それでも高橋自身は率直に「まずは知ってもらうことが一番大事」だと語る。

「今回、結果的に私はパリ五輪に出場することはできませんでした。もちろん『五輪に行けなくて残念だったな』という気持ちもあります。でも同じくらい、世界との距離が遠いと言われていた女子の走高跳で『あと1人』のところまでランキングを上げることができたという、可能性を感じられた思いもある。手探りながら海外の大会にもたくさん出て、ポイントを計算しながら結果を残せるように努力もしてきました」

 仮に「記録がよくなかったから」「五輪に出られなかったから」という結果だけで見るとするならば、その経緯自体を知ってもらう機会を失うことになってしまう。

「ビジュアル面であれ何であれ、入り口はともかくとしてまずは『ハイジャンパーの高橋渚』という存在を知ってもらいたい。その上で『また次に向けて頑張ってほしい』と言ってもらえることはすごく嬉しいですし、頑張れますね」

 もちろん昨今のスポーツ界で大きな課題となっている盗撮問題や誹謗中傷などは論外としても、SNSなども含めて「様々な角度から背景を知ってもらうことの重要性は大きい」と高橋は言う。それは仮に今後、高橋が世界大会などに出場する機会があったとして、その際にこれまでの本人のバックボーンを知っているかどうかは、競技を目にした人の選手への思い入れの多寡に大きな影響を与えるからだ。