エジプト柔道率いた泉浩監督「日本人、活躍できる」 柔道整復師輸出プロジェクトも

AI要約

元日本代表選手が他国の選手団の監督やコーチとして参加するパリ五輪で、国際協力機構(JICA)を通じて世界49カ国にスポーツ指導者を派遣する可能性が示された。

元アテネ五輪柔道銀メダリストでエジプト代表監督の泉浩氏が海外で指導する中で、礼儀やスポーツ医療の違いに触れ、柔道整復師を海外に輸出するプロジェクトを始動した。

東京五輪が遺したスポーツの価値を世界に広めるプロジェクトを通じて、日本の総合的な「スポーツ力」が国際貢献に活かされている。

11日(日本時間12日)に閉幕したパリ五輪では、日本代表としてかつて活躍した元トップ選手が、他国の選手団の監督やコーチとして参加した。日本は国際協力機構(JICA)を通じて世界49カ国にスポーツ指導者らを派遣しており、今大会は「輸出産業」としての可能性も示したといえそうだ。

7月30日の柔道男子81キロ級第1回戦。敗れたエジプト代表選手は畳の上でしっかりと足をそろえ、対戦相手のフランス代表選手に頭を下げた。

「武道の礼儀というものを少しずつだが、理解してきている」。そのさまを見つめていた元アテネ五輪柔道銀メダリストでエジプト代表監督の泉浩氏(42)は、感慨深げに振り返った。

泉氏は引退後の昨年10月に声がかかり、妻と1歳、5歳の子を残してエジプトに赴任した。

最初は戸惑うことばかりだった。練習時間は毎日わずか1時間。袖や襟の持ち方は基本通りでなく、ラマダン(断食月)は日没まで食事ができない。練習量を5倍に増やし、ラマダン時には練習時間を夜にずらした。

反発もあったが、今年4月のアフリカ選手権では男女混合団体戦で金メダル、個人戦でも8個のメダルを獲得し総合優勝。「柔道だけでなく、礼節も伝えられるのが日本人としての強みだ」と泉氏はいう。

海外に出て感じたのは、指導だけにとどまらない「差」だった。たとえば、日本には柔道整復師という医師に準ずる資格があり、試合前後に応急のケガ修復もできるトレーナーとして柔道などで活用されてきたが、エジプトにはそれに相当する存在がいない。

泉氏は今年7月から、柔道整復師をトレーナーとして海外に輸出するプロジェクトを始動させた。手始めにエジプトの柔道チームに招く方針という。「日本人が活躍できる場所は、まだまだある」。泉氏がエジプトで得た結論だ。

■日本のスポーツ輸出、49カ国展開

日本の総合的な「スポーツ力」を生かした国際貢献は、3年前の東京五輪が残した遺産の一つでもある。

東京五輪招致決定を機に、日本は世界にスポーツの価値を届けるプロジェクトを立ち上げ、2021年までに世界各地の1300万人超に、スポーツによる指導や支援などを提供した。