「プロレスを取るか命を取るか」 がんステージ4のプロレスラーが出した答え、主治医帯同で地獄のリングへ

AI要約

プロレスラーであり文京区議会議員の西村修が、食道がん(扁平上皮がん)ステージ4での闘病中に5か月ぶりの復帰戦を決めた。心配の声もあるが、自らのプロレス人生をかけた覚悟を示している。

復帰戦は電流爆破マッチで83歳のドリー・ファンク・ジュニアとのタッグ戦。がんは全身に回り、脳への転移もあるが、抗がん剤治療によって7割消滅したと述べている。

現在は放射線治療を受けており、リング復帰後に再び抗がん剤治療を開始する予定。体力の低下や副作用に苦しみながらも、試合をやめる考えはなく、自己責任で挑むことを決めている。

「プロレスを取るか命を取るか」 がんステージ4のプロレスラーが出した答え、主治医帯同で地獄のリングへ

 食道がん(扁平上皮がん)ステージ4闘病中のプロレスラーで、東京・文京区議会議員の西村修が、病院側と「念書」を交わして5か月ぶりの復帰戦に臨むことを明かした。脳への転移も公表した西村のもとには、「試合はやめたほうがいい」「命が先なんじゃないか」といった心配のメールやLINEが殺到しているが、レスラー人生をかけた大一番であることを強調。“最悪の事態”に備えてリングサイドに主治医を帯同しつつ、地獄のリングから生還することを約束した。(取材・文=水沼一夫)

「いろんな方々から毎日毎日、何十件もお見舞いメールが来て、試合はやめたほうがいい、無理するなとかお気遣いの言葉をいただきますけど、コンディションがきっちり治るのを待っていたら、何か月、何年かかるか分からない。私のプロレス人生の中で、これだけ周波が重なり合って出ざるを得ないタイミングというのは経験したことがない。しっかり病気治したほうがいい、命が先なんじゃないかっていう声はありがたいんですけど、だからこそ、そこに向かって私は戦っている。それも私にとってはプロレスなんです」

 心配の声が届くのも当然だろう。西村は『川崎伝説2024』(8月24日、富士通スタジアム川崎)のメインイベントで、83歳になる師ドリー・ファンク・ジュニアと組み、大仁田厚、雷神矢口組と電流爆破マッチで激突する。

 危険なデスマッチに加えて、がんは全身に回りステージ4の状態。抗がん剤治療によって、がんは「7割消滅」したというものの、脳に転移が判明。7月5日には入院中にけいれんを起こして失神し、ICU(集中治療室)で九死に一生を得た。

 脳腫瘍への放射線治療はすでに終了しているが、効果を確認するまでは1か月ほど時間を要する見込みだ。順調にいけば、川崎大会後に、抗がん剤治療を再開させる予定を立てている。試合まではいわば“経過観察”の期間にあたり、治療スケジュールには大きな影響がない。

 しかし、西村の体は戦う前から満身創痍(そうい)だ。度重なる入院と科学療法により、体力は削られ、治療の副作用も出ている。

「24時間のけんたい感と手足のしびれ、あと2割ぐらいの難聴になっています」

 負荷をかけた運動もできず、「はぁはぁぜぇぜぇの運動が激しくできない分、体力が落ちるところまで落ちている。新弟子なんてもんじゃない。特にスクワットはすっごいしんどい」と現実を受け止めた。

 それでも試合をやめる気持ちはない。主治医からは、「本当は勧めたくないけど、やめる気もないでしょ?」と問われ、ドクターストップの言葉をなんとかのみ込ませている。

 代わりに書くのが念書だ。万一の時は自己責任という内容だが、「それは当然のこと。今の病院に責任を押しつけるつもりは全くないし、私は自分の意思で試合に出るわけですから」と西村は納得。試合には主治医を招待し、セコンドは新日本プロレスの三澤威トレーナーに依頼した。「その他にも今回お世話になっている3人の先生も来てくださる。“医者”だけで5人そろいます」と、サポート体制を敷いた。

 ただ、どんなに万全を期しても、絶対に安心ということはないのが今の西村の状態だ。けいれんはリングに限らず、いつ起こるのか分からず、自動車の運転は禁止されている。さらに「今一番心配しなきゃいけないのは大動脈瘤。動脈の近くにべったり張り付いているがんがあるんですよ。それが悪さをして動脈をいじくったりすると即吐血。最悪の事態です」と告白した。