無敵と思われたレスリング・須崎優衣もできなかった「五輪連覇」…今こそ再評価したい、怪物フェルプス、ルイスに並ぶ伊調馨「4連覇」の偉業
レスリング男子グレコローマンスタイル130kg級で史上初の5連覇を達成したミハイン・ロペスヌネスによる偉業が話題に
ロペスヌネスの決勝での勝利後のシーンや須崎優衣の1回戦敗退など、東京五輪での様々な出来事を振り返る
歴代の夏季五輪で4連覇を果たした選手たちと伊調馨による女子での史上初の4連覇を取り上げる
8月6日、ひとつの偉大な記録が生まれた。レスリング男子グレコローマンスタイル130kg級でミハイン・ロペスヌネス(キューバ)が優勝し、夏季五輪では史上初の5連覇を達成したのである。
41歳のロペスヌネスは決勝のあと、シューズを脱ぐとマットの中央付近に置き、第一線から退くことを示した。偉業が成し遂げられたこととあわせ、世界に広く報じられた。
この日は女子50kg級に須崎優衣も出場。東京五輪に続く連覇を目指していたが、初戦で敗退した。
須崎は東京五輪後、無敗を誇ってきた。今春のアジア選手権では準々決勝で追い上げられるなど競り合い、決勝ではリードされたところから逆転勝ちで優勝と苦しんだが、ある意味、オリンピックへ向けての糧となる経験をした。その大会も踏まえ、五輪へは万全を期したはずだったが、まさかの1回戦敗退。あらためて連覇の難しさを思わせた。それだけにロペスヌネスの2008年北京五輪からの5連覇が、いかに価値が高いかを実感する。
さて、5連覇が史上初ということは、ロペスヌネスはもちろんとして、4連覇までならしていた選手はいる、ということだ。
夏季五輪では、これまでロペスヌネスのほか、5名が4連覇を果たしている。
*パウル・エルブストロム(デンマーク)ヨット男子フィン級=1948~60年
*アル・オーター(アメリカ)陸上男子円盤投げ=1956~68年
*カール・ルイス(アメリカ)陸上男子走り幅跳び=1984~96年
*マイケル・フェルプス(アメリカ)競泳男子200m個人メドレー=2004~16年
そして、もう一人が日本の伊調馨である。
レスリング女子63kg級で2004年アテネから2012年ロンドンまで、58kg級で2016年リオデジャネイロ、と4連覇を果たした。女子では史上初のことだった。
その足跡をあらためてたどると、4連覇にあっていちばんの壁は、本人のレスリングへのモチベーションがいったんは途切れたことだったといえる。