「九州の愛に救われた」東京で挫折した中村知春が再び五輪の舞台で躍動 日本は過去最高9位 自身は代表に一区切り 女子7人制ラグビー【パリ五輪】

AI要約

日本代表はパリ五輪女子7人制ラグビーで過去最高の9位となり、中村知春が代表活動に一区切りをつける。次世代に悲願を託し、素晴らしい成長を示した。

中村知春は長年代表を支え、最後の試合で体を張って9位決定戦で勝利。感慨深い結果に満足感を表明した。

中村は五輪の落選で暗闇を経験し、次回のパリに向けて臆病になるも、チームや地域への愛情を胸に再起の思いが芽生えている。

「九州の愛に救われた」東京で挫折した中村知春が再び五輪の舞台で躍動 日本は過去最高9位 自身は代表に一区切り 女子7人制ラグビー【パリ五輪】

 パリ五輪女子7人制ラグビーで日本代表は過去最高の9位となった。目指していた日本勢初のメダルはならなかったが、確かな成長の跡を示した。2大会ぶりの出場で、長く代表を支えてきた36歳の中村知春(ナナイロプリズム福岡)は代表活動に一区切りをつける考えを示し、次世代に悲願を託す。

 7月31日に行われたブラジルとの9位決定戦。後半途中から出場した中村は攻守で体を張った。素早い攻撃の一躍を担い38―7の勝利に貢献。「五輪は最高の舞台と、やっと心から思うことができた。自分のやれることはすべてやりきった。すがすがしい気持ちの9位」と話した。

 3年前は暗闇の中にいた。五輪で初めて競技が実施された2016年のリオデジャネイロ大会をはじめ、12年から20年までのほぼ全ての国際大会で主将を務めた。年間200日以上も合宿や遠征に全てをささげた日々の中だった。

 「見えないところからボコンと殴られたような感じ」

 21年の東京五輪の代表から漏れた。直後の心境について「おなかは空くからご飯は食べる。生きていく上で仕事もする。でも、お風呂に入るのがきつかったな…。ダメージを受けてるわって、自分でも思った」と振り返る。全てを懸けてきたものがなくなり、心に大きな穴が開いた。

 次回のパリに向けては「希望を持つことが怖くなった」と臆病にもなった。ただ、もう中村の活動は自分一人だけのものではなかった。福岡県久留米市を拠点とする女子7人制ラグビーチーム「ナナイロプリズム福岡」では選手兼ゼネラルマネジャー(GM)を務めている。

 国内の女子ラグビーの価値を上げることを目的にずっと活動してきた。五輪のメダルや活躍は一つの道だった。チームも立ち上げるなど道筋はつくった。五輪だけではない―。そう思うと「この道(五輪)がだめでも、やることはやってきた」と思えるようになった。

 久留米では選手としてのトレーニングはもちろん、GMとしての仕事など多くを担う。せわしい日々の中で、少しずつ再起への思いも芽生えてきたという。街に出れば「頑張ってね」「応援してます」と頻繁に声もかけてもらえた。そのたびに勇気づけられてきた。

 だからこそ「ラグビー愛が非常に強い」と九州に対する思いは大きい。「どの世代の皆さんも手を差し伸べてくださり、助けてくださる方々が非常に多くて…。愛を感じます。愛に救われた。本当に救われました」。役割は変わっても、中村はこれからも愛するラグビーとともに生きていく。(パリ山田孝人)