選手生命の危機を救った“絶対に否定しない夫”と“最強レジェンド”「3度目の五輪はスゴい」柔道・高市未来が逃したメダルの代わりに得たもの

AI要約

永瀬貴規がパリ五輪柔道男子81kg級で金メダルを獲得し、五輪2連覇を達成。

一方、同日に登場した高市未来は惨敗を喫し、過去の五輪での苦い経験との闘いを振り返る。

高市は引退も視野に入れたが、現役続行を決断。しかし、怪我のために再び選手生命の危機に直面。

選手生命の危機を救った“絶対に否定しない夫”と“最強レジェンド”「3度目の五輪はスゴい」柔道・高市未来が逃したメダルの代わりに得たもの

 7月30日、パリ五輪柔道男子81kg級で永瀬貴規が金メダルを獲得し、五輪2連覇を達成した。リオ、東京、パリと3大会連続での表彰台は、女子48kg級の谷亮子と男子60kg級で3連覇を果たした野村忠宏以来、史上3人目の快挙だった。

 永瀬は終始厳しい組み手で相手を攻め続け、最後は谷落としで勝負を決めると、この日も満員だった観客は一斉に立ち上がり、大きな歓声と拍手で祝福。日本人が勝てないと言われた81kg級で圧倒的な力を見せつけ、目の肥えた柔道大国のフランス人たちにも認めさせた。

 一方、対照的だったのが、同日の女子63kg級に登場した高市未来だ。

 高市もまた、今回が3度目の五輪だった。リオ、東京は「田代」として出場。結婚を経て、「高市」として五輪に帰ってきた。

 初戦はキューバのマイリン・デルトロカルバハルに横四方固めで勝利。しかし、2回戦でクロアチアのカタリナ・クリシュトと対戦し、延長戦の末、背負い投げで技ありを奪われた。早すぎる敗戦だった。

「なにをやっているんだっていう気持ちと、でも、もうこれ以上、頑張れないという気持ちが混じっています」

 涙ながらに語る高市は「これ以上は無理だ」というくらい、今の自分ができる100%の準備を行ってきた。

「ワクワクする気持ちもあれば、苦しくて、逃げ出したくなるときもあったし、本当に怖いなと思ったこともありました」

 過去に2度の五輪を経験しても……いや、むしろ2度も経験したからこそ、そう感じたのかもしれない。

 日本柔道がメダルラッシュに沸いたリオ、東京五輪では、表彰台に立てるだけの実力を持ちながらまさかの結末に涙した。

 リオ五輪は3位決定戦で敗れ、5位に終わった。メダルを手にする仲間たちを横目に、「帰りは同じ飛行機に乗りたくなかった。一緒にいることが恥ずかしくて」と不甲斐なさを嘆いた。リベンジを誓って挑んだ2度目の大舞台では、相手に一瞬の隙を狙われ畳に沈んだ。日本女子柔道陣は63kg級以外の階級すべてでメダルを獲得。高市は自責の念にかられた。

「惨めだったし、恥ずかしかったですね。日本代表ということさえも憚られるくらい。同じ階級にはほかにも代表候補の選手がたくさんいたのに……。私は代表にふさわしくない、オリンピックや世界選手権の代表として戦うことは向いていないんじゃないかと考えるほど、思い詰めていました」

 一時は引退も視野に入れたが、悩んだ末に現役を続行することを決断。しかし、復帰に向けた矢先の2022年2月には左膝の前十字靭帯を断裂。長期離脱を余儀なくされるなど、選手生命の危機にも直面した。

「またかという感じでしたね。私が何をしたのって思いましたし、世界選手権やパリ五輪から逆算しても、これは無理だな、終わったなとその瞬間は思いました」