「指導の基準がわからない」橋本壮市はなぜ反則負け? 永山竜樹は誤審? パリ五輪柔道「モヤモヤ判定」本当の論点

AI要約

柔道競技での判定についての議論が続いている。永山選手や橋本選手の試合での判定に疑問が生じており、基準の揺れが不信感を生んでいる。

指導の基準にぶれがあると感じられることから、偽装攻撃や消極的姿勢の選手による指導の出方も試合ごとに異なる。これが選手や観客のフラストレーションを高めている。

柔道のルールが変わる中で、細かな修正がされているものの、判定基準の揺れが相変わらず存在している。

「指導の基準がわからない」橋本壮市はなぜ反則負け? 永山竜樹は誤審? パリ五輪柔道「モヤモヤ判定」本当の論点

 7月27日に始まった柔道において、連日、判定を巡り議論が沸き起こっているという。

「待て」がかかったあとも絞め続けられ、結果、負けを宣告された60kg級の永山竜樹の件が最たるものだが、それ以外でも、観ている人に疑問を感じさせる、違和感を抱く判定が相次いでいることからだ。

 7月29日もそうだ。男子73kg級の準々決勝で、橋本壮市はジョアン=ベンジャミン・ギャバ(フランス)と対戦。橋本は指導3で反則負けを喫した。

 拮抗した試合はゴールデンスコアにもつれた。橋本が先に指導2つを与えられ、ギャバにも1つ与えられる。

 それから十数秒ほどで審判が「待て」で中断。橋本に3つ目の指導が与えられ、反則負けを喫した。

 審判が止める直前、橋本は右手、ギャバは左手で互いの袖をつかんでいた。そのとき、橋本が左手を使って(使ったように見える動作で)組み手を切った。そのとき、両者の距離は離れていた。その行為は定められたルール上、指導の対象となっている。だから勝負を決することになった3つ目の指導自体は、永山のときのような問題のある判定とただちに言うわけにはいかない。

 ただ、その決着についても、批判やさまざまな声が起きているのだという。おそらくそこには、今大会を通じての柔道の判定を巡る議論と共通するものがあるように思える。それが何かと言えば、橋本の3つ目は別として、どうしても指導の基準に、ぶれを感じさせることから来ているのではないか。

 例えば消極的であれば指導を与えられる。偽装攻撃、いわゆるかけ逃げは、技をかけて投げる気がないのに投げる真似をする行為だが、これも指導の対象だ。

 では、今あげた2つの指導は、どの試合を見ても同じ基準で与えられていると感じられるだろうか。どうしても試合ごとにばらついているように思えたりするのではないか。

 実際、ある試合では消極的な姿勢の選手になかなか指導が出なかったり、ある試合ではすぐさま出たり、そんな違いを感じることがある。

 また、偽装攻撃を繰り返しているのではないかと思えても、試合によっては偽装攻撃とみなすことなく指導を与えないこともあれば、すぐさま与えることもある。

 まずその基準に揺れがあることが、言ってみれば不信感を生じさせているきらいがある。しかも指導の出る出ないだけでなく、判断基準が試合に大きく影響することがある。

 偽装攻撃ではないか、と思える攻撃を繰り返している選手が積極的に攻めているとみられ、相対する選手が消極的だとして指導を与えられる(と感じさせる)試合もある。そのような場合、選手としてもやりきれないだろうし、観る者も当然、フラストレーションをためることになる。

 橋本とギャバの試合に話を戻せば、「あの試合の流れの中で、ギャバが1つだけしか指導を与えられなかったのがおかしい」と感じる向きもあるかもしれない。

 柔道は年月をかけて、ルールが変わってきた。「有効」や「効果」がなくなったこと、旗判定がなくなったこと、ビデオ判定の導入といった大きなことだけでなく、細かな修正もなされ続けている。