有田工、2年ぶり3度目の夏甲子園 逃げないエースが145球で完投 昨夏代表の鳥栖工に競り勝つ【高校野球佐賀大会】

AI要約

有田工は2年ぶりに代表を決め、梅崎信司監督は感極まり号泣。石永煌希投手が1点差を守り抜き、エースとしての成長を遂げた経緯が語られる。

石永はメンタル面の課題を克服し、自主練習の厳しさや監督の熱意から真のエースへと成長。昨夏の代表戦での経験が役立ち、決勝で145球の完投を果たした。

ピンチを迎えるたびに監督の励ましを受け、自信を持って投げきる姿勢を貫いた石永。初戦敗退からの成長を感じさせ、憧れのマウンドに立つ姿が描かれる。

有田工、2年ぶり3度目の夏甲子園 逃げないエースが145球で完投 昨夏代表の鳥栖工に競り勝つ【高校野球佐賀大会】

 ◆第106回全国高校野球選手権佐賀大会決勝 有田工2―1鳥栖工(24日、さがみどりの森球場)

 2年ぶりの代表を決めた有田工の梅崎信司監督(44)が号泣した。唐津西に1―8でコールド負けを喫した昨夏の佐賀大会3回戦当日に父親を失った。感極まったのには、もう一つ理由があった。「あいつがここまでやってくれるとは…」。視線の先には1点差を守り抜いた背番号1の石永煌希(こうき、3年)がいた。

 打者の内外角に小気味良く投げ込む最速138キロ左腕。1年秋からベンチ入りするなど能力がありながら、メンタルに課題があった。窮地になると弱気になる。練習で自分を追い込めない。だから、なかなか真のエースになれなかった。昨秋の九州大会は背番号20でベンチ入りも、今春の佐賀大会はベンチを外れた。

 ある日、自主練習で当初決めていた走り込みの本数をクリアせずに帰宅しようとしたことがあった。それを見た梅崎監督は「決めたことはやり切ろう。逃げては駄目だ」と伝えた。その熱意に石永も胸を打たれた。

 最後の夏。梅崎監督は地元の佐賀県有田町にある陶山神社のお守りを、石永に「俺の魂をこれに込めて、おまえに預けておくから」と渡した。熱意を感じ取った石永は誓った。「絶対に逃げない」。大会を通して主戦でけん引。昨夏代表で鳥栖工の145キロ右腕、松延響(ひびき、2年)との投げ合いとなった決勝は8四球を与えながらも、145球で完投した。

 ピンチを迎え、弱気になりそうになると、石永はベンチを見た。「監督が胸に手を当てて『大丈夫だ。自信を持っていけ!』と励ましてくれました。全力で最後まで投げきろうと」。浜田(島根)に初戦敗退した2年前の夏、当時1年生だった石永はアルプス席から声をからした。堂々の大黒柱となった左腕が「甲子園1勝」を胸に、憧れのマウンドに立つ。(西口憲一)