レゲエ校歌で話題の和歌山南陵、3年生だけの部員10人が智弁和歌山の前に散る【高校野球和歌山大会】

AI要約

和歌山南陵は強豪智弁和歌山に7回コールドの完封負けを喫し、ベスト8を逃した。

部員は3年生のみの10人で、悔し涙を流す場面もあった。

エースの松下が最高速度更新するなど奮闘するも、全校生徒が3年生のみの18人と再建を目指す現状が続いている。

レゲエ校歌で話題の和歌山南陵、3年生だけの部員10人が智弁和歌山の前に散る【高校野球和歌山大会】

◇23日 全国高校野球選手権和歌山大会3回戦 和歌山南陵0―7智弁和歌山=7回コールド(紀三井寺球場)

 和歌山南陵は、夏の全国制覇3度を誇る智弁和歌山に7回コールドの完封負けを喫してベスト8を逃した。部員は3年生だけの10人。SNSなどで話題となった”レゲエ校歌”を歌うことができず、悔し涙を流した。

 エースの右腕、松下光輝投手は2回に失策絡みで2点先制されると、5回には2ラン本塁打を浴びるなど、一挙に5点を追加された。打線は5回に1死一、二塁のチャンスをつかみながらも、本塁は遠かった。最後は背番号「10」の畑中公平投手が代打で出場し、遊ゴロ。全員が出場して、最後の夏が終わった。

 和歌山県日高川町にある同校は旧経営陣によるゴタゴタがあり、新規生徒の募集を停止している状況。全校生徒は3年生のみの18人。野球部以外では、6人がインターハイに出場するバスケットボール部員で、2人が吹奏楽部員だ。現在の3年生が2年前に入学したときは、野球部員は50人近くいたそうだ。同期生も2人が転校し、残ったのが10人だった。

 学校再建を担う甲斐三樹彦理事長(52)は「監督、選手は本当に良くやってくれました。劣悪な環境のなかで練習に励み、忍耐強い子たちです」と話せば、岡田浩輝監督(27)は「ひと区切りの夏と思って臨みました。1人でも2人でも欠けたら試合ができません。10人でここまで来てくれて感謝しかありません」と目を潤ませた。

 この3年生が卒業すると在校生はいなくなる。甲斐理事長は、生徒募集の再開に向けて尽力中。その理事長と交流のある歌手の横川翔との縁から、新校歌が生まれたという。横川がレゲエ・アーティストのINFINITY16(インフィニティーシックスティーン)とWARSAN(ワーサン)に声を掛けて、3人の作詞・作曲によるレゲエの新校歌が誕生した。6月には同校でお披露目。紀北農芸との2回戦に勝ったときは10人でレゲエ校歌を歌った。

 歌詞が「一歩前へ 今 手を繫(つな)ぎやれること 一歩前へ 今 夢摑(つか)め 今今今」で始まる校歌。学校や選手の思いを込めて作詞された。

 エースの松下は「すべてを出し切ろう」と渾身(こんしん)の投球を繰り広げ、強豪相手に自己最速を3キロ更新する146キロを計測した。レゲエ校歌は再び歌えなかったが「最初は校歌じゃないなと思っていたんですけど、歌っていったら校歌や、と思うようになりました。周りと違う校歌で、目立って注目されて良かった」と話す。

 選手の奮闘に、甲斐理事長は「感動しました。彼らが新たなスタートを切ってくれたので、学校名も変えずに再出発したい」と話した。