ホームラン激減だけでない…“異様な貧打”プロ野球5つのデータ「ピッチクロックなしで時短」「統一球時代と比べても」問題の根本は?

AI要約

今年のNPBで急増しているマダックス記録について

MLBでのピッチクロック導入とNPBの試合時間の変化について

投手の進化よりも打撃の弱体化が疑われる状況について

ホームラン激減だけでない…“異様な貧打”プロ野球5つのデータ「ピッチクロックなしで時短」「統一球時代と比べても」問題の根本は?

 今季、極端な「投高打低」が進行していると信じるに足るデータが次々と出てきている。本稿では、それについて検証していこう。数字は前半戦終了(7月21日)時点。

 端的な事例としては「開幕3カ月半で『マダックスが6例』」というのがある。

 マダックスとは「先発投手が100球未満で完封勝利を挙げる」ことだ。

 6月末にこのコラムでも紹介したが、そのときに「すでに4例、異常に多い」と書いたが、なんとそれからさらに2例増えた。

〈2024年〉

 4月29日/ヤフーレ(ヤ)巨人戦94球3安0四5振

 6月12日/伊藤大海(日)中日戦98球3安0四7振

 6月12日/隅田知一郎(西)広島戦99球4安2四4振

 6月16日/石田裕太郎(De)西武戦95球4安0四6振

 6月25日/森下暢仁(広)ヤクルト戦91球2安0四4振

 7月5日/高橋宏斗(中)広島戦99球4安1四7振

 NPBの球史には投手の球数が明らかでない時期があるが、2015年以降マダックスは21例しか達成されていない(2021年CSでの奥川恭伸を入れれば22例)。この間のノーヒットノーランが13例(2018年CSでの菅野智之を入れれば14例)なのをみても、それに匹敵するレアな記録であることがわかる。そのレアな記録が、今年に入って立て続けに6例も達成されているのだ。なおノーヒットノーランも今年2回記録されている。

 マダックスが急増したのは、NPBの先発投手が急に進化して、少ない投球数で打者を打ち取れるようになったからだと見るのは、かなり無理がある。打撃の弱体化が疑われるところだ。

 MLBでは試合時間を短縮化するために2023年から「ピッチクロック」が導入され、試合時間は平均3時間7分から2時間42分に短縮された。

 NPBでも従来は、3時間を優に超す試合が当たり前になっていたが、今年は異変が起きている。

 以下は2020年以降のNPBの試合時間の推移、9回まで。カッコ内は、延長戦も含めた試合時間。

 2020年:3時間13分(3時間16分)

 2021年:3時間11分(3時間11分)

 2022年:3時間09分(3時間14分)

 2023年:3時間07分(3時間13分)

 2024年:3時間00分(3時間07分)

 2020年は延長戦は10回まで。2021年は延長戦が行われず9回打ち切り。2022年からは延長は12回までとなった。

 ここ20年、NPBの試合時間は9回段階で3時間10分前後で推移してきた。最短は2011年の3時間6分だったが、今季は前年から一挙に7分も短くなった。

 ピッチクロックを導入したわけではないから、投手の投球間隔が短くなったわけではない。打撃戦が減少して試合進行が早くなったとみるべきだろう。