サルに「死の概念」なし?死んだ個体との交尾行動を確認 野生の霊長類では初 京大の研究グループが発表

AI要約

京都大学の研究グループが、タイに生息する野生のベニガオザルを観察し、死んだ個体との交尾行動を初めて報告

死んでいる状態を理解することは難しいと考えられるが、普通ではない状況であることは理解できる

死体との交尾は社会的順位の低いオスによって行われ、高順位のオスは交尾を避ける傾向がある

仲間の「死」に直面した時に、動物はどう振る舞い、どう向き合うのか。こうした動物の死生観について、京都大学の研究グループが、野生の霊長類としては初めて、死んだ個体との交尾行動をタイに生息するサルで観察したと発表しました。

発表したのは、京都大学の豊田有特任研究員らのグループです。霊長類の研究では近年、「霊長類が死を理解しているのか」といった「死生学」の分野も注目されていて、研究グループは2015年から、タイに生息する野生のベニガオザルを継続的に観察し続けてきました。

グループによりますと、2023年1月、ベニガオザルのオトナのメスの死体を偶然、発見。他の個体が死体に対してどのような反応を示すか3日間観察し続けた結果、3頭のオスが死体と交尾する場面をあわせて4回確認したということです。

3日目の腐敗が進んだ死体に対しても交尾が行われたことから、ベニガオザルには「無抵抗で横たわっている状況」が「死んでいる」状態とは結びつかない、つまり「死の概念」がないのではないかという考察に至ったということです。

ただ、交尾したオスらは、立ち上がって周囲を確認したり、触った手を地面に擦り付けたりと、普段みられない行動も示したことから、死んでいる個体が「普通ではない」ことは理解できていると思わせる行動も観察されたということです。

一方で、交尾をしたのは社会的順位の低いオスだけで、メスとの交尾を独占するはずの高順位のオスたちは死体とは交尾をしなかったことも確認されたということです。

野生の霊長類において、死んだ個体との交尾が記録されたのは初めてで、グループは「少なくともベニガオザルにおいては、仲間が『死んでいる』という状態を理解することは難しいのではないかという結論を示唆する極めて貴重なデータだ」としています。