金星から海が消えた謎に迫る 水素の宇宙流出、仕組み推定 米大学

AI要約

金星に海があった可能性と大量の水が消えたメカニズムについての研究結果が発表された。

大気上層に存在するHCOプラスイオンにより、水が宇宙空間に流出した可能性が示唆されている。

今後の探査機にHCOプラスイオンを観測する装置が搭載されることが期待されている。

 太陽系初期には地球と双子のように似た金星に海があった可能性が高いと考えられており、米コロラド大の研究チームは大量の水が消えたメカニズムを推定して20日までに発表した。大気上層に水素と炭素、酸素の原子が1個ずつ組み合わさり、プラスの電気を帯びた「HCOプラスイオン」が多く存在すれば、水を構成する水素原子が宇宙に流出するという。

 これまで金星に到達した探査機ではHCOプラスイオンを観測していなかったため、今後開発される探査機に観測装置を搭載することが期待される。論文は英科学誌ネイチャー電子版に掲載された。

 金星は地球と同じ岩石質で大きさも似ているが、現在は海がない。大気はほとんど二酸化炭素(CO2)で構成され、硫酸の雲で覆われているため、温室効果により地表温度は400度を超える。ただ、大気上層の温度は低く、単純に高温が原因で水が蒸発して水蒸気になり、宇宙空間に流出したという説は成り立たない。

 金星は地球のような磁気圏がなく、「太陽風」と呼ばれる太陽から噴出するイオンや電子の流れにさらされている。研究チームは、大気上層では水(H2O)とCO2からHCOプラスイオンが多く発生しており、マイナスの電子と結び付いて水素原子と一酸化炭素(CO)に分解すれば、水素原子が宇宙に大量に流出すると推定した。コンピューターによるシミュレーションでも裏付ける結果を得たという。