なんと、ローマ軍が「最も恐れた兵器」をつくった天才は、人類史上「最も偉大な発明」もつくった…!その原理と発想が現代的すぎる…

AI要約

古代の驚異的なウルトラテクノロジーについて知識豊富な実験物理学者による最新刊が刊行され、その内容を短期連載で紹介。

古代エジプトやローマの技術には、現代でも使用されている要素が見られる。

古代科学者アルキメデスの作った兵器「アルキメデスの爪」の恐るべき効果について紹介。現代のクレーン技術との関連も考察されている。

なんと、ローマ軍が「最も恐れた兵器」をつくった天才は、人類史上「最も偉大な発明」もつくった…!その原理と発想が現代的すぎる…

あの時代になぜそんな技術が!?

ピラミッドやストーンヘンジに兵馬俑、三内丸山遺跡や五重塔に隠された、現代人もびっくりの「驚異のウルトラテクノロジー」はなぜ、どのように可能だったのか?

現代のハイテクを知り尽くす実験物理学者・志村史夫さんによる、ブルーバックスを代表するロング&ベストセラー「現代科学で読み解く技術史ミステリー」シリーズの最新刊、『古代日本の超技術〈新装改訂版〉』と『古代世界の超技術〈改訂新版〉』が同時刊行されました。

それを記念して、残念ながら新刊には収録できなかったエピソードを短期集中連載でお届けします。第4回のテーマは「アルキメデスの爪」。この連載の第1回で登場を予告した「ローマ軍が最も恐れた兵器」の正体とは?

梃子(てこ)、滑車、クレーンが古代エジプトのピラミッド建造に用いられたであろうことは、このほど刊行した『古代世界の超技術〈改訂新版〉』で述べた。

これらについての記述は、ローマの建築家・ウィトゥルウィウスの紀元前1世紀の著作や、紀元1世紀頃にアレクサンドリアで数学者・技術家として活躍したヘロン(生没年不詳)の著作『メカニカ(機械学)』に見られる。

ウィトゥルウィウスが記述したクレーンは、次の図に示すような「二股クレーン」で、現在でもこれとまったく同じ型のものが石材業者によって一般的に使われている。

一方のヘロンは、『メカニカ』のほかに、『プネウマティカ(圧力機構)』『メトリカ(測量学)』『ジオメトリカ(幾何学)』など多数の著作を遺しており、アルキメデスに匹敵する科学者、技術者である。

梃子、クレーン、滑車の働きを熟知していたアルキメデスがつくった大型兵器に、“アルキメデスの爪”とよばれるものがある。

ローマ軍が、シラクサを要塞化していたアルキメデスのさまざまな兵器の中で最も恐れたのが、この“アルキメデスの爪”だった。

接近する船を爪に引っかけて、持ち上げて転覆させたり、滑車に張っていたロープを突然放して船を水面に叩きつけて破壊する兵器である。引っ張る力は「動滑車」の働きで軽減され、持ち上げられる船の重さ自体が「アルキメデスの浮力の原理」によって軽くなるという優れものである。

アルキメデス自身は、自らの兵器について書き遺していないが、ローマの歴史家・プルタルコスに次のような記述がある。

内側にある大型機械は、船を引っ張り、ぐるぐる巻き上げ、壁の下に突き出た険しい岩場にたたきつけた。乗船していた多数の兵士が死亡した。多くの船は、空中に相当高くまで持ち上げられ──見るも恐ろしい光景だ──大型機械は、乗組員がすべて投げ出されるまで、あちこちに転がし、揺さぶり続けた。最後は、船を岩場に落とし、たたきつけた。

(P・ジェームズ、N・ソープ著、矢島文夫監訳 『事典 古代の発明』東洋書林、2005年)

現代ではもちろん、図に示したような“アルキメデスの爪”が兵器として使われることはないが、高層ビルの建築現場や港湾の荷役現場で多用されている大型クレーンの基本的構造はアルキメデス時代とまったく同じである。

動力源が、人と家畜からモーターに変わっただけである。