紀元前3世紀のシラクサの戦いで、ローマ軍を退けた秘密兵器は、なんと「ソーラーレーザー」…太陽エネルギーを集めて、敵艦を殲滅

AI要約

古代の驚異的なウルトラテクノロジーについて解説された最新刊の紹介。

アルキメデスが発明した「熱光線兵器」の逸話とその仕組みについて。

古代から現代に至るまで使われている凹面鏡を利用した太陽熱調理器の原理について。

紀元前3世紀のシラクサの戦いで、ローマ軍を退けた秘密兵器は、なんと「ソーラーレーザー」…太陽エネルギーを集めて、敵艦を殲滅

あの時代になぜそんな技術が!?

ピラミッドやストーンヘンジに兵馬俑、三内丸山遺跡や五重塔に隠された、現代人もびっくりの「驚異のウルトラテクノロジー」はなぜ、どのように可能だったのか?

現代のハイテクを知り尽くす実験物理学者・志村史夫さんによる、ブルーバックスを代表するロング&ベストセラー「現代科学で読み解く技術史ミステリー」シリーズの最新刊、『古代日本の超技術〈新装改訂版〉』と『古代世界の超技術〈改訂新版〉』が同時刊行されました。

それを記念して、残念ながら新刊には収録できなかったエピソードを短期集中連載でお届けします。第3回のテーマは、アルキメデスが発明した「熱光線兵器」。紀元前200年代の古代戦争で強力な威力を発揮した兵器の「驚くべき仕掛け」とは?

紀元2世紀、アテナイに住んでいたルキアノス(117頃~180頃)という著述家がいる。

「神々の対話」や「死者たちの対話」などの“風刺的対話”という新たな文学形式を作り出し、皮肉に満ちた「真実の話」では月世界旅行を書き、空想旅行記作家の元祖となった人物である。

このルキアノスが紀元前214~前212年のシラクサの戦いの際、アルキメデスが熱光線を用いて船に火災を起こし、ローマ海軍を撃退したという逸話を記している。“空想旅行記作家の元祖”が書いたことだから、真実かどうかはわからないが、アルキメデスより200年以上も前に生きた劇作家・アリストファネス(前448頃~前388頃)作の「雲」(初演は紀元前423年)の中に太陽光をレンズで集めて火をつける話が出てくるので、アルキメデスの熱光線兵器はあながち荒唐無稽なものとも思われない。

事実、アルキメデスは数学分野の1つである放物線の研究から、放物線を軸を中心にして回転することによって得られる放物面をもつ「凹面鏡」の焦点の存在を知っていた。この焦点に太陽光がもつ莫大な熱エネルギーを集中できることを確信し、実験も行っていたに違いない。

周知のように、古代から現在まで、オリンピックの聖火の採火は古式に則って太陽光を凹面鏡で集中して得た熱で行っている。また、現在でもまったく同じ原理の凹面鏡を用いた太陽熱調理器は屋外での調理に便利に使われている。