まるで「地球のマスク」…知っているようで知らなかった「地球温暖化」その驚愕の「からくり」

AI要約

気象学の基本原理である大気の大循環について解説されている。太陽からのエネルギーが大気を暖め、対流や波動によってエネルギーが運ばれる仕組みが紹介されている。

電磁波と海の波の類似点について言及されており、波長という概念を通じて電磁波の種類や伝播方法が説明されている。

可視光や赤外線などの電磁波について詳細に言及されており、物体の温度に応じて放射される電磁波の波長が異なることが説明されている。

まるで「地球のマスク」…知っているようで知らなかった「地球温暖化」その驚愕の「からくり」

「謎解き・海洋と大気の物理」、「謎解き・津波と波浪の物理」で知られるサイエンスライター保坂直紀氏による『地球規模の気象学』。

風、雲、雨、雪、台風、寒波……。すべての気象現象は大気が動くことで起こる。その原動力は、太陽から降り注ぐ巨大なエネルギーだ。

赤道地域に過剰に供給された太陽エネルギーは大気を暖め、暖められた大気は対流や波動によって高緯度地域にエネルギーを運ぶ。

ハドレー循環やフェレル循環、偏西風が、この巨大な大気の大循環の中心を形作る。大気の大循環を理解すれば、気象学の理解がより深まるはずだ。*本記事は、保坂 直紀『地球規模の気象学』(講談社ブルーバックス)を抜粋、編集したものです。

太陽は電磁波を四方八方に放射している。電磁波とは、エックス線や紫外線、可視光、赤外線、電波など、空間を光速で伝わる波の総称だ。

海の波を想像してみよう。遠く離れた台風から海岸に押し寄せる「うねり」。そして恐ろしい津波。これらの波は「波長」が違う。水面が盛りあがった波の山から隣の山までの距離を波長という。海岸に押し寄せる波は波長が比較的短くて数十メートル、大きな津波になると100キロメートルということもある。おなじしくみの波でも、さまざまな波長のものがある。

電磁波でも事情は変わらない。電磁波と海の波は伝わるしくみがまったく違うが、電磁波にも波長がある。海面の波が山・谷・山・谷と繰り返しながら伝わっていくように、電磁波にも特有の繰り返しがある。その繰り返し1個分が波長だ。

わたしたちの目に見える可視光と、テレビやラジオの信号を運んでくる電波がおなじ電磁波だというのは、感覚的には納得しがたいが、それは、わたしたちが可視光をキャッチできる感覚器として目を発達させたというだけのこと。数ある電磁波のなかで可視光だけが他と違うように思えるのは、そういう理由だ。

電磁波はどれもおなじしくみで光速で伝わり、波長の違いによって、さまざまな名前がつけられている。可視光よりすこし波長が長い電磁波は赤外線。それより長いのが電波だ。逆に可視光より波長がすこし短いのは紫外線。それより短いとエックス線、さらにガンマ線になる。

太陽からくる電磁波は、そのほとんどが紫外線と可視光、赤外線だ。運ばれてくるエネルギーの量は可視光と赤外線がほぼ半々で、紫外線もすこしある。このうちで、いちばん強いのは可視光だ。だから、わたしたちが物を視覚でキャッチする際に可視光を使うのは、道理にかなっている。というよりも、わたしたち人間は、電磁波のなかでもとりわけ強い可視光を物の知覚に使えるようになったので、それを「見える電磁波」という意味で可視光と名づけたわけだ。

じつは、電磁波は、どんな物からでも放射されている。太陽のように熱い物だけではない。

どんな温度の物体から、どのような波長の電磁波がどれだけ放射されているかを考えるときに基本となるのは、「プランクの法則」という物理法則だ。物体から電磁波が放射されるとき、その物体の温度に応じて決まるある波長の電磁波がいちばん強く、それより短い波長の電磁波は急に弱くなり、それより長い波長の電磁波は、すこしずつ弱まっていく。そして、いちばん強いエネルギーをもつ波長は、温度が低いほど長く、高いほど短い。太陽の場合は、それが可視光の領域なのだ。