機能性表示食品、「根拠」に社員の論文のケース 「紅麴」サプリも

AI要約

機能性表示食品に関する論文の透明性や信頼性に疑問が指摘されており、社員が論文を書いていることにも疑念がある。

京都大の調査では、機能性表示食品の根拠とされた論文の多くが有利な結果だけを強調していることが指摘され、問題が浮上している。

また、専門誌に掲載された論文の信頼性にも疑問が投げかけられており、消費者庁のデータベースからも問題の根源が見えてきている。

機能性表示食品、「根拠」に社員の論文のケース 「紅麴」サプリも

 国の審査を経ずに効果をうたって販売できる「機能性表示食品」で、企業が「根拠」としている論文の透明性や信頼性に疑問を示す専門家の声が相次いでいる。社員が論文を書いていることへの疑問も出ている。

 機能性表示食品は「体脂肪が減る」「コレステロール値が下がる」といった健康上の効果をうたうが、国の審査は必要なく、企業側が「自己責任」で効果の根拠を示して届け出れば販売できる。

 京都大のグループは2月、機能性表示食品の根拠とされた論文32本を調べ、うち7割が「(機能性食品の)有利な結果ばかりを強調している」と指摘する論文を発表した(https://doi.org/10.1016/j.jclinepi.2024.111302)。体重や腹囲などに変化がなかったことには触れず、内臓脂肪が減ったという結果だけを強調しているといった問題がみられたという。

 32本の論文のうち18本が同じ医療専門誌に掲載されていた。このうち問題が指摘されたものは17本あった。

 臨床試験に詳しい田中智之・京都薬科大教授も、同誌に載った論文について、例えば2023年8月号だけでも試験対象者についての説明が不十分だったり、必要な統計解析がなされていなかったりする論文が数本あると指摘。「査読(第三者の専門家による内容の検証)が機能していれば通らないはずの説明がある」とコメントした。

 朝日新聞は、消費者庁のデータベースにある約8千件の届け出情報から、各製品が健康増進効果の根拠としている「採用文献リスト」を独自に調べた。リストが見つかった7389件の届け出のうち、この専門誌に載った論文を採用しているものが少なくとも3942件(53%)あった。

 論文は一般的に、審査を担う複数の専門家の指摘に対応して修正を重ね、掲載に至る。学術誌によっては投稿から掲載まで年単位におよぶことも珍しくないなか、同誌は論文投稿から2~3カ月での掲載をうたっている。食品のリスク問題に詳しい唐木英明・東京大名誉教授(薬理学、毒性学)は「論文をすぐに載せたい企業の求めに専門誌側が応じる関係になっているようだ。制度を作った消費者庁も予測しなかった事態だろう」と指摘する。

 この専門誌の出版社は朝日新聞の取材に対し、不備がある論文が掲載されているという指摘を「真摯に受け止め」るとした上で、審査担当者の人数を増やしたり、投稿規定を改めるなどの対策をとっていると答えた。