「2035年ごろまでに人類は寿命脱出速度に達する」発明家カーツワイルが語る「AIが医療にもたらす恩恵」

AI要約

2045年に訪れると予想されるシンギュラリティについての予測と未来への楽観的な展望。

AIの進化がエネルギー、製造、医療分野に革新をもたらす可能性について。

人類がAIを活用して太陽光発電や製造業に革命をもたらす可能性。

「2035年ごろまでに人類は寿命脱出速度に達する」発明家カーツワイルが語る「AIが医療にもたらす恩恵」

コンピュータが全人類の知能を超える「シンギュラリティ(技術的特異点)」が2045年にやってくると予見した、発明家のレイ・カーツワイル。

テック楽観主義者と呼ばれる彼は、昨今のAIに関する議論について「大事なことを見落としている」と英誌「エコノミスト」に書く。その理由とは──。

今日産まれた子供たちが幼稚園に入るころには、科学から創作にわたりあらゆる認知的作業において、おそらく人工知能(AI)が人間の能力を超越しているはずだ。

2029年までに我々はこうした汎用人工知能(AGI)を手にすることになるだろう──私がそう初めて予言した1999年、ほとんどの専門家は私が小説家にでも鞍替えするつもりなのかと笑ったものだ。

だが、ここ数年で目覚ましいブレイクスルーが何度も起こり、いまや多くの専門家が、我々はもっと早くAGIを手にすると考えている。当時は夢のような話をする楽天家だと思われていた私は、いまや「AIの進化にはまだ時間がかかる」と語る悲観主義者のようだ。

とはいえ私自身としては、むしろ明るい未来を見ている。

私はAI分野で、61年間研究を続けてきた。存命の研究者の誰よりも長い。現在、AIがグローバルな議論の中心になったことはとても喜ばしく思う。だがそこで交わされる議論のほとんどは、ChatGPTやGeminiといった大規模言語モデルがもっと実世界にも活用できる技術であることを見落としている。

AIはデジタル世界を変革するだけでなく、物質的世界をも変貌させる飛躍を遂げようとしているのだ。これには無数の恩恵が伴うが、とりわけ3つの領域において重大な意味を持っている──すなわちエネルギー、製造、医療の分野である。

世界は2世紀にわたり、再生不可能な化石燃料を必要としてきた。しかし地球に降り注ぐ太陽光のわずか0.01%を獲得利用することができれば、全人類のエネルギー消費を賄うことができる。

1975年時点と比べ、太陽電池は容量1ワットあたり99.7%も安くなり、世界的な太陽光発電の総量は200万倍になった。それなのに、どうして太陽光はまだエネルギー生産の中心となっていないのだろうか? ここには二重の問題が存在する。

まず、太陽光発電の材料は石炭やガスに完全に取って代われるほどには安くもないし、効率的でもない。

次に、太陽光発電のエネルギー生産量は一年を通して変化するため、大量のエネルギーを必要なときまで保存しておく必要がある。そして現在のバッテリー技術はそこまで費用対効果が高くないのだ。

一方、AIはシミュレーションによって何十億という化学物質をすぐさま選別することができるし、すでに太陽光発電とバッテリーの両分野でイノベーションを推し進めている。そしてそれはまもなく劇的に加速していくはずだ。

2023年11月までに、人類はあらゆる技術に用いることのできる無機化合物を2万種類発見している。その後、グーグルのAI「GNoME」が人類をさらに凌ぐ成果を出した。発見総数は瞬く間に42万1000種類にまで増加したのだ。

だがこれもAIの応用の一端にすぎない。より高性能のAGIが最適の材料を見つければ、太陽光発電のメガプロジェクトが実行可能となり、太陽エネルギーをほぼ無料で使えるほど大量に獲得できるはずだ。

エネルギーを豊富に獲得することで製造の変革が起きる。食品、衣服、電化製品、車に至るまで、ほぼあらゆる製品コストの大部分を、エネルギーや人件費(研究開発やデザインなどの認知労働を含む)、原材料費が占めている。AIはこれらすべてのコストを大幅に下げるだろう。