牛由来の高病原性鳥インフルエンザ ヒトに高い感染力か 東大チーム

AI要約

牛に感染したH5N1型の高病原性鳥インフルエンザウイルスが、ヒトへの感染効率が鳥由来のウイルスよりも高い可能性があることが新たな研究で示唆された。

研究チームは牛由来のH5N1型がヒトの呼吸器細胞の受容体に強く結合し、牛由来のウイルスがヒトへの感染効率を高める可能性があると報告した。

さらに、フェレットとマウスに感染させた実験では、牛由来のH5N1型が強い病原性を示し、特にマウスに対してはヒトの季節性インフルエンザの1万倍以上の病原性を持っていた。

牛由来の高病原性鳥インフルエンザ ヒトに高い感染力か 東大チーム

 牛に感染したH5N1型の高病原性鳥インフルエンザウイルスは、ヒトへの感染効率が鳥由来のウイルスよりも高い可能性があると、東京大新世代感染症センターの河岡義裕機構長らのチームが発表した。マウスやフェレットに強い病原性を示すことも確認。ウイルスが変化した可能性があり、ヒトへの感染拡大が懸念される。

 チームはヒトの呼吸器細胞の受容体を使い、牛由来と鳥由来のH5N1型をそれぞれ反応させた。すると、牛由来のほうが鳥由来より結合力が強いことがわかった。「ヒトへの感染効率が鳥由来より高いことを示唆するデータだ」(チーム)という。

 牛由来のH5N1型をフェレットとマウスに感染させたところ、脳や筋肉など全身でウイルスが増殖し、強い病原性を示した。マウスに対する病原性は、ヒトの季節性インフルエンザの約1万倍もあった。フェレット間では、飛沫(ひまつ)によって感染が広がることも確認した。

 H5N1型は鳥類では感染力や病原性が非常に高いのが特徴で、2000年代に世界的流行が始まり、各地でニワトリの大量死を起こしてきた。20年以降にはさまざまな哺乳類への感染例が相次ぎ、ヒトでは28人の感染が世界保健機関に報告されているが、ヒト―ヒト間での感染例は報告されていない。一方、米国では今年3月以降、乳牛への感染が急拡大。熱処理していない牛乳を介したヒトへの感染が牧場で起きている。

 河岡さんは「ウイルスの性質が変わっている可能性が示唆された。ヒト間の感染についても、今後の推移を気にかけるべきだ」と話した。

 成果は9日付の英科学誌ネイチャー電子版(https://doi.org/10.1038/s41586-024-07766-6)に掲載された。【渡辺諒】