じつは、壁紙の模様は「数学的に分類」されていた…その数、なんと「たったの17」…貼り合わせでズレない「驚愕のパターン」

AI要約

物理学者・数学者のロジャー・ペンローズが半世紀探し求めてきた「アインシュタイン・タイル」が2023年に発見され、その幾何学的な発見が大きな注目を集めている。

壁紙の模様について数学的に考察された連続性や分類について紹介しており、フェドロフの17類型などの基本概念に触れている。

平面充填模様の数学的なアプローチや構造に興味を持ち、パズル感覚で幾何学の世界を探求する『ペンローズの幾何学』が反響を呼んでいる。

じつは、壁紙の模様は「数学的に分類」されていた…その数、なんと「たったの17」…貼り合わせでズレない「驚愕のパターン」

ノーベル賞学者としても有名な天才物理学者・数学者のロジャー・ペンローズが、1970年代から半世紀にわたって探し求めてきた「ある図形」が話題になっています。

その名は「アインシュタイン・タイル」。

2023年にようやく発見されたその図形とは、いったいどのようなものなのでしょうか?

ペンローズが考案した「ペンローズ・タイル」を超える“幾何学上の大発見”について、ビジュアル重視でやさしく詳しく解説した『ペンローズの幾何学』が刊行され、たちまち大増刷と大きな反響を得ています。

パズル感覚で楽しむことができ、しかも奥深い「平面幾何」の世界を探訪してみましょう。

※この記事は、『ペンローズの幾何学』の内容から再構成・再編集したものです。

平面充填(じゅうてん)模様の最も身近な事例の一つとして、壁紙の話をします。

壁紙は、印刷機械の都合から、たいてい長方形のものを1つのパターンとします。長さは異なっても横幅はつねに一定で、それをぴったり張り合わせていくことで壁を埋めていきます。

この連載の以前の回にも登場した畳タイルの形状のように、ひとまず縦が横の2倍の長さということにして話を進めましょう。

縦が横の2倍の長さの長方形の上部は、次の紙の下部とくっつき、左側は右側と合わさることになります。ここでもし、パターンの柄がズレていると、壁紙の模様に連続性がなくなり、張り合わせたラインが不細工に目立ってしまうでしょう。

そんなことが起こらないよう、連続した模様がどこまでも自然につながっていなくてはなりません。

そのような連続性のある模様を数学的に分類したのは、数学者のG・ポリヤと彼の仲間たち(G・H・ハーディとJ・E・リトルウッド)でした。彼らは、そのような模様の数学的分類は17通りあり、それ以上は存在しないことを1924年に示しました。

その研究以前に、記号や用語を含めてわかりやすく解説したのは、エヴグラフ・フェドロフという人で、1891年のことです。その分類は現在、「フェドロフの17類型」とよばれています。

まずは、フェドロフの17類型について簡単に説明しておきましょう。

数学的センスの高い人にとっては、この簡単な説明で十分かもしれませんが、なかには紛らわしく、ややこしいものや、複数の類型に当てはまる模様もありますので、「わかったつもり」で納得してしまうのは、少々危険だともいっておきましょう。なお、例示された図は、藤田伸(2015)が紹介したいくつかの例に、J. Beyer(1998)の例示を補足したものです。

次の図をご覧ください。

「略記号」欄に書かれているのは「国際共通標記/INSGT」とよばれるものです。

略記号の冒頭は、小文字の「p」か「c」になっています。「p」は“Primary Cell”の頭文字で、「基本セル」と訳しておきましょう。平面充填模様において繰り返されるパターンの最小単位と考えて差し支えありません。

「c」は“Centered Cell”の頭文字で、「面心」と訳されています。その特徴として、通常の方形(正方形、長方形、平行四辺形)のように、x軸を固定した格子ではなく、辺がx軸、y軸に平行でない(特に鏡映軸や基本セルの方向に対して斜めの)ひし形の格子になると覚えておいてください。

じつは「c」も四角形による基本セルの一種ですが、壁紙に示される連続性の方法が異なるのです。