知名度があまりにも低い「ローレンツ力」ってなにもの?…じつは身近に存在する「電磁気学的な力」の正体

AI要約

物理に挫折した人向けの読み物形式の本『学び直し高校物理』から、電磁気学編のローレンツ力について紹介。

静電気力と比べてローレンツ力が日常生活でよく使われていることを説明。

ローレンツ力は電流によって作られる磁場から荷電粒子に働く力であり、静電気力よりも簡単に大きな力を作り出せる。

知名度があまりにも低い「ローレンツ力」ってなにもの?…じつは身近に存在する「電磁気学的な力」の正体

物理に挫折したあなたに――。

読み物形式で、納得!感動!興奮!あきらめるのはまだ早い。

大好評につき5刷となった『学び直し高校物理』では、高校物理の教科書に登場するお馴染みのテーマを題材に、物理法則が導き出された「理由」を考えていきます。

本記事では電磁気学編から、ローレンツ力についてくわしくみていきます。

※本記事は田口善弘『学び直し高校物理 挫折者のための超入門』から抜粋・編集したものです。

同じ電磁気学的な力でありながら、静電気力に比べてローレンツ力ははるかに身近な存在だ。日常生活にもローレンツ力を使った製品がいたるところに存在している。その一方で、静電気力に比べて、ローレンツ力の知名度は著しく低い。

ローレンツ力とは、磁場内を運動する荷電粒子に磁場から働く力のことをいう。1895年にオランダのライデン大学教授のヘンドリック・ローレンツによって導き出された。

磁場は一般には磁石によって作られるというイメージがあるかもしれないが、むしろ電流によって作られる場合のほうが多い(下の図)。人類が安定した磁場を発生させることができるような安定した電流を作れる技術を手にしたのはほんの200年ほど前のことで、それまでは磁石が磁場の主な発生源であった。

電流が流れると、それを取り巻くようにぐるっと磁場が発生する。磁場の回転の向きは電子の移動方向に対して上図のようになる。磁場の回転の向きは、「電流の流れる向きに右ねじを巻きこむ場合のネジの回転方向」と定義されているが、例によって電流の向きと電子の流れる向きが反対なのでわかりにくい。

大きな静電気力を発生させるには大量の正電荷か負電荷を1ヵ所に集めなくてはならないが、正電荷と負電荷は強く引きあうので、何もしなければ大量の正電荷か負電荷を集めた時点で、周囲から逆符号の電荷が引き寄せられて電荷を中性にしてしまう。

これを遮蔽するのは簡単じゃないので大きな静電気力を作り出すのも簡単ではない。それに比べると、ローレンツ力は電流を大きくすればいいだけなので、はるかに大きな力を作り出しやすい。結果、静電気力に比べるとローレンツ力は我々の日常にありふれたものになる。