増加の一途たどる「梅雨の大雨」 例年より遅い梅雨入りの今年は・・・ベテラン気象予報士に聞いてみた 教えて!吉田さん!!

AI要約

先月28日からの暖かく湿った空気が前線に流れ込んで大雨となる。

梅雨入り前でも早くも梅雨末期のような雨量を観測。

将来的にはラニーニャ現象による猛暑や台風の異例進路に備える必要がある。

増加の一途たどる「梅雨の大雨」 例年より遅い梅雨入りの今年は・・・ベテラン気象予報士に聞いてみた 教えて!吉田さん!!

 先月28日、台風1号からの暖かく湿った空気が前線に流れ込んだ影響で、梅雨入り前にもかかわらず広い範囲で大雨となりました。線状降水帯は発生しなかったものの、1日の降水量が100ミリを超えたところが、全国で260ヵ所もありました。中でも日降水量は、高知県香美市繁藤では317.5ミリ、長野県の御嶽山では304.0ミリで、300ミリを超える雨量を観測。梅雨入り前なのに、早くも梅雨末期のような雨の降り方になりました。

 一年を旬ごと(上旬・中旬・下旬)に分け、それぞれの旬の大雨の変化傾向(1901年以降で大雨の頻度がどれだけ増減したか)を表にしました(梅雨のない北海道と梅雨の期間が大きく異なる南西諸島は除く)。

 その結果、7月上旬~中旬の梅雨末期で大雨の頻度が増加しており、「梅雨末期の大雨」は、近年になってさらにその傾向を強めていることが伺えます。また、梅雨入り前の5月や、10月中旬から下旬の秋本番の時期も大雨の頻度が増加していることから、大雨の期間が長くなっていることも考えられます。

 去年は5月上旬に大雨で兵庫県伊丹市の天神川で決壊したほか(工事により川幅が縮小されたことが主な原因ですが、雨は広く100ミリ以上を観測)、さらに2021年には大阪で5月の1ヶ月間で梅雨の時期を越える大雨が発生する状況になっています。

 現状、太平洋高気圧は西への張り出しは強いものの、北への張り出しは弱く、梅雨前線は本州の南の海上を離れて停滞するものとみられます。このため、近畿などでは梅雨入りは遅れ、今のところ6月中旬以降と、平年より遅くなりそうです(近畿の梅雨入りの平年は6月6日頃)。

 ただ、梅雨入りした後は、いったん降れば大雨になるおそれが高まります。上で示した通り、梅雨末期の大雨が増えており、7月半ばにかけては線状降水帯などによる大雨への警戒が必要です。そして、そのあとは太平洋高気圧が発達し、大変な猛暑になってしまいそうです。

 去年から続いていたエルニーニョ現象は、この先は終息へ向かい、今後はラニーニャ現象になる可能性が高くなっています。ラニーニャ現象が発生すると猛暑になる可能性が高く、今年と同様エルニーニョからラニーニャに変わった2010年、ラニーニャ気味となった2016年とも連日の猛暑に見舞われた上、残暑も厳しくなりました。当時よりも地球温暖化が進んでいる影響もあり、3年連続で記録的に暑い夏となるおそれもあります。

 また、いまのところ台風の発生は遅れていますが、2010年は観測史上初めてとなる福井上陸、2016年も観測史上初めてとなる岩手上陸を記録しており、今年も台風がいままでにない進路をとる可能性もあり、過去の経験にとらわれない対応が必要になってきます。

 最新の気象情報を活用して、この先も雨や暑さにお気をつけください。

(ABCウェザーセンター気象予報士 吉田裕一)