「宇宙カレー」JAXA採用、コンセプトは地産地消 岐南町の食品会社製造、厳格な基準クリア

AI要約

岐阜県の食品メーカーが宇宙食の製造に取り組んでおり、地元食材を使用したカレーが宇宙食として採用されている。

同社は約6年前から宇宙食への参入を模索し、種子島の地鶏やバナナを使用したカレーを開発。JAXAの厳格な基準をクリアし、宇宙日本食として認証を受けた。

宇宙飛行士のISSミッションに搭載されたカレーは、試食会でも好評であった。同社は今後も採算は取れないが宇宙食の製造を続ける考え。

「宇宙カレー」JAXA採用、コンセプトは地産地消 岐南町の食品会社製造、厳格な基準クリア

 航空宇宙産業が盛んな岐阜県で、レトルト食品などを手がける食品メーカーが宇宙食の製造に取り組んでいる。ケイ・エイ商事(羽島郡岐南町三宅)は、種子島宇宙センターがある鹿児島県・種子島の地元食材を使ったカレーを開発し、昨年3月に宇宙食として本採用された。将来的に宇宙産業の成長が見込まれる中、宇宙に長期滞在する宇宙飛行士の食を支えている。

 同社が製造に乗り出したのは約6年前。宇宙食への参入を模索する取引先から提案をもらった。「宇宙というワードに弱かった。小学校の卒業文集に『宇宙に行ってみたい』と書いていたので」と振り返るのは同社取締役の青木俊明さん。レトルト食品の製造技術を生かせると思い、提案を引き受けた。

 カレーのコンセプトに据えたのは地産地消だ。ロケット発射場のある種子島の地鶏「インギー地鶏」とバナナを食材に採用した。無重力空間で食べやすいように粘り気を持たせ、味は甘めに仕上げた。宇宙航空研究開発機構(JAXA)が宇宙日本食としての認証に求める厳格な基準をクリアした。

 22年にはプレ宇宙日本食として認められた。若田光一飛行士の国際宇宙ステーション(ISS)長期滞在ミッションに搭載されると、23年3月に県内では初めて宇宙日本食として認証を受けた。今年3月に長期滞在から帰還した古川聡飛行士のISSミッションにも搭載され、青木さんは「工場監査も厳しく、難しいかと思っていたので、うれしかった」と喜ぶ。

 同社の商品は今月12日に岐阜かかみがはら航空宇宙博物館(各務原市)であった宇宙食の試食会でも紹介され、家族連れら約40人が同社のカレーライスをはじめ、宇宙食のようかん、サバ缶、緑茶を味わった。南帷子小5年の男児は「カレーがおいしかった」と笑顔を見せた。

 食材調達との兼ね合いもあり、カレーの一般販売は行っていない。介護や乳幼児向けの食品開発に注力する同社にとって、宇宙食事業では採算は取れないが、製造技術をアピールする上で、今後も供給を続ける考え。青木さんは「近い将来に宇宙がより近くなる。宇宙産業の発展を会社として支えていきたい」と意気込む。