【若者の新聞製作】記憶と教訓の継承に(9月4日)

AI要約

県内出身の高校生と大学生有志がエネルギー問題をテーマに新聞づくりを進めている。東京電力福島第1原発事故の記憶と教訓、電力の在り方について若者の考えをまとめ、未来の同世代に伝える取り組み。

磐城桜が丘高校生と大学生が5人で活動を始め、双葉高校の過去の校内新聞に刺激を受ける。原発事故に関わる若者たちが未来へのメッセージを残す必要を感じ、放射性廃棄物や廃炉について取り組む。

新聞製作を通して若者が課題を見つけ、解決策を考えて教訓を学ぶ。県内外の高校に記事を配布し、若者の声を広く届ける。次代に受け継ぐため、若者の新聞づくりを応援したい。

 県内出身の高校生と大学生の有志がエネルギー問題をテーマにした新聞づくりを進めている。東京電力福島第1原発事故の記憶と教訓や、今後の電力の在り方について若い世代の考えをまとめ、未来の同世代に伝える取り組みは意義深い。未曽有の災禍を経験した本県の若者による自発的な課題探求の手本として広まってほしい。

 いわき市の磐城桜が丘高の3年生2人と、県内出身の大学生3人の計5人が今夏、活動を始めた。原発事故に伴い休校している双葉高で50年前に発行された校内新聞を知ったのがきっかけだった。

 当時は福島第1原発の双葉町側敷地で6号機が着工した時期に当たり、地元の大きな出来事として新聞部が特集を組んだようだ。「原子力発電の安全性を問う」「どこへ捨てる放射性廃棄物」といった見出しに、今に通じる問題意識が読み取れる。「廃炉後は公園に」との願いは、難航している廃炉の現実に直面して重い。

 半世紀前の記事に刺激を受けた5人は「原発事故が起きた福島県に関わる自分たちこそ、未来へメッセージを残す必要がある」と動き出した。原発から出る高レベル放射性廃棄物の最終処分や、廃炉などに関して問題提起する。新聞部の1年生として当時の新聞製作に携わった伊沢史朗双葉町長にインタビューしたり、執筆に関わった卒業生から話を聞いたりする。全国の原発立地地域の高校生へのアンケートも予定している。

 磐城桜が丘高の生徒は昨年、県内のNPO法人が主催した原発関連の視察団に参加し、スウェーデンを訪れた。高レベル放射性廃棄物の最終処分場建設地で関係者の思いを聞き、情報公開や透明性確保の重要性、地元住民とのコミュニケーションの在り方などを探った。こうした内容も記事に盛り込み、今年度内に県内外の高校に配布するとしている。国会議員や電力会社、報道機関、原子力関連機関にも範囲を広げ、本県の若い世代の声を届けるよう求めたい。

 原発事故発生から11日で13年半が経過する。新聞製作は自ら課題を見つけ、解決の道筋を考える作業を通して、教訓が身に付いてくる。次代にしっかりと受け継ぐためにも、若者の新聞づくりを応援していきたい。(渡部純)