水難事故 救助者が飛び込む前に知っておきたいこと 「岸まで運ばない」「浮いて待つ」

AI要約

水難事故が相次ぎ、救助者が巻き込まれるケースが増加している。

水難学者の斎藤秀俊教授は救助時に飛び込まないように呼びかける一方、浮いて待つことを勧める。

予防策として水深や看板をチェックし、子どもと一緒に遊ぶことも重要だ。

水難事故 救助者が飛び込む前に知っておきたいこと 「岸まで運ばない」「浮いて待つ」

 夏休みのさなか、今年も各地で水難事故が相次いでいる。中でも、溺れる子どもを助けようとして、救助者が巻き込まれるケースが目立つ。「むやみに水に入ってはいけない」と頭では理解していても、もし大切な人が溺れていたら、きっととっさに飛び込んでしまうだろう。水難学会理事斎藤秀俊さん(61)=長岡技術科学大学大学院教授=に飛び込んでしまうことを前提に対処法を聞いた。

 14日、岡山県新見市の高梁川で、島根県雲南市の中学2年(13)と小学3年(8)の兄弟が川に流され、兄が死亡した。弟は父親に救出され、命に別条はなかった。兄は、川に流されたサンダルを拾おうとして溺れた弟を助けに入ったところだったという。6月には、岡山県玉野市の池に転落した小学1年の女児(6)を助けようとした曽祖父(80)が溺死する事故もあった。

■浮いて待つ

 斎藤さんは水難学者として、救助する際に飛び込まないように呼びかけるものの、「溺れている人がいたら、私自身も反射的に動いてしまうだろう」と理解を示す。その時、「溺れている子どもをつかまえても、岸に連れて帰ろうとしないでほしい」と注意を促す。「子どもを支えて、自身は沈んだまま岸へ運んだ結果、子どもが救助されたところで、息が続かず、沈んでしまうケースがよくある」と理由を説明する。とるべき行動は、一緒に「浮いて待つ」こと。体を大の字にして、あおむけで浮く「背浮き」をして、救助を待つことを勧める。

 子どもが一人で溺れるという状況を作らない「予防策」も大切だ。まずは必ず親子で一緒に水の中で遊ぶこと。子ども一人が水の中で遊び、親は岸から横目で見ながら、スマホを触る―なんてことはあってはならない。

 そして、水遊びをする際は「水深がひざ下の場所を選ぶこと」。ひざ下であれば、たとえ子どもがこけてしまっても、すぐに助けることができる。水深がひざ上になると、太ももが動かしづらく、運動能力が下がるため、急に流された場合、対処できなくなるという。

■看板があれば入らない

 「泳ぐな!危険」といった内容の看板が立っている場所で、水難事故が繰り返されていることにも警鐘を鳴らす。「看板が立っているということは、過去に大きな事故があった証し。決して入らないでほしい」と述べる。

 斎藤さんは「水難事故は泳いでいる時を想像しやすいが、実は水の中を『歩いていて』深みにはまるという事例が多い。遊ぶ場所の水深を把握し、『急に深くなる場所があるかもしれない』ということを頭に入れておいてほしい」と強調する。

■深刻な二次災害

 水難事故の報道などを基に、公益財団法人河川財団(東京)がまとめた調査によると、2003~2023年の水難事故(3673件)のうち救助行動がとられたのが全体の4割。そのうち、救助行動中に同行者が事故に遭う「二次災害」は約14%発生しており、多くは死亡または行方不明になっている。二次災害は特に「家族連れ」「大人に引率された子どもグループ」など子どもを含むグループで多く発生しているという。