ウクライナ伝統技法の盆 長崎発祥の茶華道家元へ アナスタシアさん(長崎大大学院)が寄贈

AI要約

ウクライナ文化と日本茶道の交流を通じて、新たな文化交流の可能性が生まれた

ウクライナの伝統技法「ペトリキフカ塗り」を用いた特注の盆を贈ることで感謝を表現

盆は長崎市で行われるチャリティーお茶会でも披露される予定

ウクライナ伝統技法の盆 長崎発祥の茶華道家元へ アナスタシアさん(長崎大大学院)が寄贈

 「新たな文化の交わりを作りたい」。ウクライナの衣服や雑貨を輸入・販売する「UA.Designer」のアナスタシア・ストラシコさん(25)が、長崎発祥の茶華道の流派「文人流」5代家元、山口祥泉さん(66)にウクライナの伝統技法「ペトリキフカ塗り」を用いた盆を贈った。

 アナスタシアさんは東部ドニプロ出身。ロシアの侵攻を受け避難し、2022年5月から長崎大大学院で学ぶ。高見翔希代表(27)とUA.Designerを開業し、ウクライナの文化を長崎で伝えている。

 「日本の文化も学びたい」。アナスタシアさんは3月から山口さんの煎茶教室に通い始め、茶をいれる過程や静粛な時間に癒やされた。山口さんへの感謝の思いを込めて、ウクライナの名匠と呼ばれる職人に特注した。

 ペトリキフカ塗りは、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録され、猫の毛で作った筆などを使い、動植物や歴史を描く伝統技法。2カ月かけて制作した盆は縦27センチ、横42センチ。幸運を意味する木を使い、ウクライナの歌にも登場するセイヨウカンボクの実など実在の植物が桜色や緑、赤の色合いで描かれている。

 文人流は大正末期に長崎で始まり、茶器で長崎の風景を表現するのが特徴の一つ。7月13日、山口さんがカラフルな盆が映えるようにと、白い茶わんとガラスの急須を選び、基本の「二重棚のお点前」を稽古した。玉露の茶葉を「香り」を味わう40度、「うまみ」の60度、「渋味」の90度のお湯で3回いれ、船を表す茶たくにのせて、もてなした。

 アナスタシアさんは急須や茶わんがのった盆を「国際交流しているよう。不思議な感じ」と笑顔で見つめた。山口さんは「ウクライナの文化を詳しく知らなかった。他国の文化を取り入れてきた長崎らしい光景」と語った。

 盆は8月12日、長崎市市民活動センター「ランタナ」(馬町)で開くチャリティーお茶会でも披露される予定。お茶券は500円から。売り上げは全て人道支援団体に寄付する。問い合わせはUA.Designerのホームページから。