アート好きな大人が続々とハマってしまう!「消しゴムはんこ」のディープな世界

AI要約

消しゴムはんこが大人のアート好きな間でブームになっている。

消しゴムはんこ展示会で多彩な作品や技法を見ることができる。

消しゴムはんこのアート性の高さや作家の厚い層に驚く。

アート好きな大人が続々とハマってしまう!「消しゴムはんこ」のディープな世界

「消しゴムはんこ」といえば、「子供の頃に図工の授業で彫ったことがある」「年賀状を消しゴムはんこで作ったことがある」というような、うっすらした経験しかない人が大半だろう。

だがその消しゴムはんこが少し前から、アート好きな大人が手軽にできる趣味として、静かなブームになっているのだという。

そういわれても、恥ずかしいことに、筆者の消しゴムはんこのイメージはナンシー関止まりで、そこから更新されていない。いったい、どんな人がハマっていて、どんな作品が生まれているのだろうか。それを知るために、2024年7月7日から7日間開催された「けしごむ・はんこ・てん」を訪れてみた。

訪れたのは平日の午後だったが、驚いたのは入場者が多いこと。会場がそれほど広くないことと入場無料なこともあるだろうが、ひっきりなしに人が入ってきて、会場内で渋滞が起こるほどだ。しかし取材に応じてくれたヒノデワシ株式会社社長(消しゴムはんこ協会代表)の菅谷英子さんによると、「初日の日曜日の混雑は、こんなものではなかった。今日は空いているほう」とのことで、またびっくり。

50cm×50cmの巨大な「消しゴムはんこ」も!

会場をぐるっと一回りした。ひとくちに消しゴムはんこといっても、シンプルなほのぼのした作風から、「これほんとうに消しゴムはんこ?」と目を疑うような緻密なものまで、本当にさまざま。

だが驚くのはまだ早かった。会場では何人かの消しゴムはんこ作家の方々がガイドをしてくれているので、話を聞いていると、次第に、消しゴムはんこにもディープな技法がたくさん存在することがわかってきた。

「++ラクダママ工房++」の「こけしちゃんは、。地元豊田の小原和紙に細かな着物の柄のはんこを押して着物用の反物を作り、それを着物に仕立てて(!)こけしに着せている。右は「ぎゅぎゅっ!」(やぎはんこ)。アウトラインの線だけをスタンプで押し、彩色はコピックで行っているため、消しゴムはんこというより、一般的なイラストのイメージに近い。

中でも驚愕したのが、写真(右)の「夕焼け」(エピリリ)という作品。通常は消しゴムはんこで多色摺りをする場合、色別に複数のはんこを使うが、この作品は「掘り進み版画」という技法を使い、1個のはんこで「彫る」→「刷る」を繰り返しながら多色刷りをしていく。上の写真(左)はその過程。失敗しても修正がきかない難しさがあるが、一般的な消しゴムはんこアートには難しい、絵画のような奥行き感が出せるという。

彫り方、刷り方にもさまざまな技法があるが、消しゴムはんこで描いた絵を立体的にアレンジした作品もいくつかあった。

消しゴムはんこというと、シンプルで素朴でかわいらしい絵柄ばかりをイメージしていたが、展示されている作品を見て、そのアート性の高さ、作家の層の厚さに驚いた。

後編では、数百円から手に入れることができる即売コーナーや、その場で消しゴムはんこづくりをオーダーできるブース、自分で消しゴムはんこづくりを体験できるワークショップについても紹介。

なぜ今、消しゴムはんこがこんなに熱いのか?老舗ゴムメーカー・ヒノデワシの菅谷社長にその理由を聞いた。

取材・文/桑原恵美子

取材協力/株式会社ヒノデワシ