農繁期の働き手確保へ 北海道、京都と連携 えらぶ島づくり協組

AI要約

新たな事業が鹿児島県の沖永良部島で始まり、農繁期の人手不足緩和に取り組む

えらぶ島づくり事業協同組合が北海道と京都の団体と連携し、労働力確保体制強化事業を展開

3地域で50人の労働者を受け入れ、農業作業や宿泊を提供する計画

農繁期の働き手確保へ 北海道、京都と連携 えらぶ島づくり協組

 農繁期の人手不足緩和に向けた新たな事業が鹿児島県の沖永良部島で始まる。実施主体は、えらぶ島づくり事業協同組合(朝戸末男代表理事、組合員11事業者)。北海道と京都の団体と事業体制を構築し、農業分野での安定的な働き手確保に連携して取り組む。

 2023年度に始まった農水省の労働力確保体制強化事業「産地間連携等推進タイプ」に応募し、採択された。24年度の事業展開で、国から事務経費350万円、労働者の交通・宿泊費など旅費1000万円の支援がある。

 連携団体は北海道・道南地域のNPO法人やくも元気村(八雲町)と京都府・丹波地域の株式会社百章(宮津市)。全国200軒余の農家を渡り歩き、農業の魅力発信活動などに取り組む、北海道生まれの小葉松真里さん(34)が橋渡し役となった。

 具体的には、事業はえらぶ島づくり事業協組が事務局となり、両団体と連携して進めていく。想定する労働力は①農閑期に他産地に働きに行く農家②各産地で農業バイトとして働く人③地方での就農意欲のある人―など。確保手段は、各産地での事業説明会、求人募集サイトへの掲載やSNS(インターネット交流サイト)での発信など。

 事業全体の調整役となる小葉松さんによると、道南地域は野菜やジャガイモ、丹後地域は稲作のほか、花卉(かき)、ショウガ、水菜など、いずれも多くの人手を必要とする作物が主力。農繁期の人手不足は共通課題。人材確保難は意欲的な農家が抱く規模拡大の障害ともなっている。

 えらぶ事業協組の金城真幸事務局長(55)によると、事業を通じて労働者が働きやすくリピートしたくなる環境づくりも目指す。首都圏でPRイベントを開催するほか、3地域外の地方にも出向き働き手の確保と連携先の拡大を目指す。島内2町との情報共有も図りながら進める。

 初年度の募集規模は3地域で計50人。受け入れ時期は▽道南は9月上旬~10月下旬▽丹後は8月下旬~10月上旬▽沖永良部島は1月中旬~2月下旬。雇用期間は7~8日を見込む。

 沖永良部島の受け入れ人員は30人の予定。作業はジャガイモの掘り取り、花卉の収穫・選別などを計画している。宿泊場所は島内のゲストハウスやシェアハウスなどで確保する。給料は各農家が直接支払う。

 事業は7月末の採択通知を受けて、正式に始動した。沖永良部島では現在、労働者の募集準備と事務局体制の確立、受け入れ農家や宿泊施設との調整などが進んでいる。

 沖永良部島は冬場の農繁期を中心に農作業に従事する島内外の労働者が多数存在する。島外からの労働者の来島交通費は雇用側が片道分を負担するのが通例。宿泊場所は雇用側が独自に確保する。農水事業を活用すれば、その分、労働者、雇用者双方の負担軽減が見込まれる。

 金城事務局長は「農業の維持、発展に向けて島外の農業地域と労働力を融通し合う模範事例を構築したい」と話す。全国各地の農繁期の農家を約300日渡り歩く小葉松さんは「新たな事業をきっかけに、新たな農業との関わり方を実践する人が現れてくれたらうれしい」と期待する。

 えらぶ島づくり事業協組は20年施行の「地域人口の急減に対処するための地域特定づくり事業推進法」に基づく県内第1号組織(21年5月知事認定)。異業種の事業者で通年雇用を創出し、組合採用の職員を組合員事業者に派遣している。今回の産地間連携事業は、同協組の独自メニュー「有料職業紹介事業」の一環で展開する。