取り乱した小2女児「私、死ぬの?」…繰り返し聞かれる母も疲弊 能登支援を続けるボランティア男性、今も現地で衝撃 孤独に陥る人々、声掛けると「久しぶりにたくさん話した」…家族や親戚に頼れない理由

AI要約

能登半島地震から7カ月経った伊藤康之さんが、被災者支援のためにボランティア活動を続けている。

伊藤さんは孤独を感じる被災者に寄り添い、心のリフレッシュの重要性を認識している。

被災地の復興が進まず、伊藤さんは速やかな復興を願っている。

取り乱した小2女児「私、死ぬの?」…繰り返し聞かれる母も疲弊 能登支援を続けるボランティア男性、今も現地で衝撃 孤独に陥る人々、声掛けると「久しぶりにたくさん話した」…家族や親戚に頼れない理由

 能登半島地震は8月1日で発生から7カ月を迎えた。故郷の埼玉県久喜市上内のわし宮団地の商店街でカフェ「Kuki紅茶」を営む東京都足立区の不動産業、伊藤康之さん(47)は定期的に石川県に赴き、ボランティア活動を続けている。東日本大震災で助けられた経験から、恩返しをしようと決意。社会福祉士の資格と自身の被災経験を生かして孤独を抱える被災者を支援し、「一日も早い復興」を願う。

 東日本大震災の発生時、商社に勤めていた伊藤さんは青森県八戸市に単身赴任していた。停電で先輩の家に身を寄せ、津波警報の発令を受けて高台のホテルへ避難。困窮する被災者にホテルは予約のキャンセルで余った食材を無償で提供した。「人の優しさ、助け合いの大切さを実感した」。伊藤さんは振り返る。

 5月に社会福祉士を対象にした能登半島地震のボランティアに申し込み、6月3~16日と7月1~6日に金沢市社会福祉協議会の下で活動した。内容は市内のみなし仮設住宅で暮らす被災者の生活支援。全国から集まった社会福祉士と協力して1日10軒余りを訪問し、健康状態を確認して悩みを聞き、適切な医療機関や福祉施設につなげる。

 被災者と接して感じたのは孤独の深さだ。故郷を離れた単身の高齢者は近くに知り合いがおらず、負担になるのを恐れて家族や親戚を頼ることもできない。伊藤さんは訪問先で「久しぶりにたくさん話せて良かった」という言葉を何度も聞いた。

 地震がもたらした心の傷の深さにも衝撃を受けた。小学2年生の女児は大きな余震が発生すると取り乱し、「私、これで死ぬの?」と母親に繰り返し尋ねた。元日の出来事を思い出している様子だった。女児は学校を休み、心配する母親も疲弊していた。

 「被災者が抱える問題には解決が難しいものもあるが、話を聞いてくれる第三者がいるだけでも精神的なリフレッシュになる。思いの丈を打ち明けられる存在は大きい」と伊藤さん。ただ耳を傾けるだけでなく、時には自身の被災経験も話して寄り添う。

 伊藤さんは8月13~16日に3回目のボランティア活動を予定している。その間、マスターとして一人で切り盛りする「Kuki紅茶」は休業せざるを得ないが、「困っている人がいるから」と今後も続けていくつもりだ。

 7月7日に訪れた輪島市は大規模火災の影響もあり、倒壊した家屋や店舗がそのままになっている場所もあった。伊藤さんは「時間がたつにつれ、被害の報道やボランティアの人数は減っていく。インフラの復旧も遅く生易しくはないが、一日も早い復興を願っている」と話した。