指定廃棄物処分場候補地 栃木・塩谷選定10年 農家の負担いまだ重く

AI要約

東京電力福島第1原発事故で発生した指定廃棄物による問題が栃木県内の農家に長期間にわたり影響を与え続けている。

指定廃棄物の未解決の問題に対し、当事者たちは諦めや失望などさまざまな感情を抱いている。

指定廃棄物の管理場所が未定のまま放置され、関係者や住民は不安や疑念を抱えながらも解決の道筋が見えてこない状況だ。

指定廃棄物処分場候補地 栃木・塩谷選定10年 農家の負担いまだ重く

 東京電力福島第1原発事故で発生した指定廃棄物を巡り、栃木県内ではいまだに多くの農家が農地などでの一時保管を強いられている。「まさかこんなに長引くとは」「問題が忘れられているのではないか」。諦めや失望など、胸中にはさまざまな感情が入り交じる。国が塩谷町の国有林を処分場(長期管理施設)の詳細調査候補地に選定して10年。指定廃棄物を長年抱えてきた当事者だからこそ、問題解決の難しさも実感している。

 青々と生い茂る牧草地の片隅に、黒い遮水シートに覆われた塊がひっそりと置かれている。中には1トンを超える稲わらなどの指定廃棄物がある。

 「この前、竹を切ったが、またすぐに生えてくる。こうして様子を見に来るのも、10年以上になるとは」。那須町の保管者の男性(72)は呆(あき)れ顔で話す。業者が定期的に点検しているはずだが、最近、誰かが訪れた形跡はないという。

 男性は「指定廃棄物の問題も風化しているように感じる」と話す。2022年3月、那須町の民有地が暫定集約先に決まったと報道で知った。ただ、いつ搬出が始まるのか、連絡はまだない。

 「昔より(放射能の)濃度は下がっているとは思うんだ」。冷静に受け止める一方で「一日も早くなくなってほしい」と願う。

 暫定集約先が未定の矢板市では、農家6戸が保管を続ける。同市の男性(37)は17年にがんで他界した父(当時69歳)から保管を引き継いだ。「国の責任で早く対応してほしい」と、市職員らに訴えた生前の父の姿を覚えている。

 「こんなに長引くとは父も想定外だと思う。国や行政の動きが見えず、取り残されているようにも感じる」と話す。

 11年の震災後に生まれた娘は小学生になった。「子どもの健康に影響がないか心配」。安全だと謳(うた)われた原発の事故によって指定廃棄物は生じた。「安全と言われても本当なのか疑ってしまう」

 男性は「絶対に自分の代で終わらせる」との思いを抱える一方、国が描く塩谷町への処分場建設方針には複雑な気持ちだ。「自分の近くにあれば誰だって嫌。住民の反対を押し切って進めてほしいとは思わない」と語った。解決への出口は見通せないままだ。