佐世保・高1同級生殺害事件10年 発生前の対応が問題視 連携態勢を構築 児相で臨時朝礼

AI要約

長崎県佐世保市で起きた高1女子同級生殺害事件から10年を迎え、児童相談所が再発防止策を強化していることが明らかになった。

事件後の対応が問題視されたことから、職員研修や他機関との連携強化などを行っている。

児相の対応改善や連携強化により、同様の事件を未然に防ぐための取り組みが進められている。

佐世保・高1同級生殺害事件10年 発生前の対応が問題視 連携態勢を構築 児相で臨時朝礼

 長崎県佐世保市で起きた高1女子同級生殺害事件から10年を迎えた26日、県佐世保こども・女性・障害者支援センター(児童相談所)は臨時の朝礼を開き、事件を風化させないよう認識を共有した。同センターでは事件発生前の対応が問題視されたのを受け、相談の受け付け態勢や他機関との連携を強化。今年初めて職員を対象にした研修を実施するなど、再発防止に取り組んでいる。

 職員約30人の前で田川雅章所長は事件について「発生から10年の節目を迎え、児童相談所の職員として大きな課題と教訓を与えられた案件」と説明。「常に子どもの最善の利益を考慮して展開するという基本理念をいま一度しっかり認識し、常に原点に立ち返る必要がある」と訓示した。

 同センターでは25日、主に入庁10年未満の職員を対象に、事件後にまとめた検証報告書から学ぶ研修を初めて実施。職員12人が資料や当時の新聞報道から事件に対する認識を深めた。

 事件は2014年7月26日に発生。高校1年の同級生の女子生徒=当時(15)=を殺害したとして県警は翌27日に当時15歳の少女を殺人容疑で逮捕した。長崎家裁は15年7月、少女を医療(第3種)少年院に送致する保護処分を決定。21年11月、24年までの収容継続を認めた福岡高裁決定が確定した。少女は現在25歳。

 加害少女は小学6年の時、同級生の給食に異物を混入。中学3年時には父親を金属バットで殴った。少女を診断していた精神科医は事件の約1カ月半前、児童相談所(児相)に「誰かを殺すのではないか」と相談したが、児相は対応しなかった。

 県福祉保健部は事件後、検証報告書で「重大性への認識が欠け、より慎重に協議を検討すべきだった」と児相に厳しい評価をした。

 児相は事件翌年から相談を24時間受け付け、相談一つ一つを「受理会議」にかけて組織的に検討する態勢を構築。相談の処理件数は14年度4600件だったが、22年度は6202件と増加傾向にある。

 県教委などとの連携も不可欠。県教委は15年、非行児童などの存在を把握した場合、児相や警察なども関わり、迅速に支援に当たる「要保護児童対策地域協議会」の開催を要請する手順などを示した「学校と関係機関との連携マニュアル」を作成した。法改正に伴って修正を重ね、今年2月には4回目の改訂をしている。