幸福の源泉(7月10日)

AI要約

作家の佐藤愛子さんは100歳になり、ユーモア溢れるエッセーの人気作家として知られている。最新刊では幼少期の思い出や幸福について綴られており、昔の風景に触れることで心が若返るという。

福島医大教授が、お年寄りの認知機能を改善するために昭和の風景を描いた絵本を出版した。認知症の母親が明るさを取り戻す姿を見て着想したもので、過去の時代を振り返ることが幸福の源泉となる。

佐藤さんは人生の波乱万丈を乗り越え、普段の日々のありがたさを実感している。夫の借金を肩代わりした経験から、大切な人に今も輝いていることを伝えたいと思っている。

 作家の佐藤愛子さんは満100歳。近年はユーモアあふれるエッセーが人気だ。ベストセラーの「九十歳。何がめでたい」は映画化され、福島、いわき両市で上映されている▼百寿での最新刊は胸を打つ。「全生涯で一番の幸福」と題した記憶が収められている。幼い頃、いつも眠る前に階段下から「お父ちゃーん、おやすみなさーい」と声を張り上げる。2階から「おう」と父親の太い声が返り、満足して寝床に向かう。今も返事が耳によみがえるという▼昭和の風景を描いた絵本を、福島医大教授の男性が出版した。お年寄りの認知機能を改善させるためという。認知症の母親が思い出話をする時、明るさを取り戻すのを見て思いついた。チンチン電車、盆踊り、大阪万博…。ページをめくり、過ぎ去った時代に思いをはせる。幸福の源泉だ。気持ちはぐっと若返る▼人生山あり谷あり。佐藤さんは夫の多額の借金を肩代わりした経験を持つ。波瀾[はらん]万丈だったからこそ、何げない日々のありがたさを実感したのだろう。過ぎし日の大切な人へ声を張り上げ、言ってみたい。「今も輝いているよ」。懐かしい「おう」の返事を聞けば、山を、谷をもうひと越えできそう。<2024・7・10>