質問入力、“対話”重ね考え整理…教育に生成AI模索 岐阜市教委が実証実験

AI要約

岐阜市教育委員会が学校現場にAIを導入する実証実験を始めた。

生成AIを活用した生徒の学びに期待が寄せられている。

実験期間中、AIを活用した授業の効果を検証し、今後の活用に生かす予定。

質問入力、“対話”重ね考え整理…教育に生成AI模索 岐阜市教委が実証実験

 岐阜市教育委員会は本年度、学校現場に生成人工知能(AI)を導入する実証実験を始めた。このうち生徒の学習については、同市長良福光の長良中学校をモデル校とし、通常授業にも取り入れている。特性を生かした活用には課題もあるが、子どもたちの個々に応じた学びや、探究的な学びにつながると期待が寄せられている。

 「地熱を利用した農業とは?」。生徒がタブレット端末にそう質問を入力するとAIは地熱を利用した温室栽培の概要、メリットをまとめた文章を瞬く間に生成し、末尾に「温室内の温度管理がなぜ重要なのか、あなたはどう思いますか?」と投げかけてきた。生徒が自分の考えを打ち込むと「その通りです! 以下の点についても考えてみましょう…」とさらに発展的な内容が生成されていく-。

 6月25日に長良中学校であった2年生の社会科(地理)の授業風景だ。この日は単元のまとめとして、教員から「九州の人は自然環境を生かしながらどのように生活しているか」という問いが出され、生徒は資料や検索エンジンと並んで生成AIを利用し、質問を打ち込んだり指示をしたりしてやりとりしながら、考えを整理していった。

 同校では同月から授業で生成AIを取り入れており、この日はその様子を全校一斉に公開した。理科や英語でも活用する時間が設定され、生徒は自分の解答が正しいかを確認する手段として利用していた。

 市教委が導入したのはチャットGPTを活用した生成AIのクラウドサービス「スタディポケット」。解答のアドバイスや新たな問いを出題するなど、生徒の理解度に沿った学習を進められるのが特徴で、自宅でも利用できる。1年の生徒(13)は「分からない英単語に線を引いて画像を取り込むと、意味や発音を教えてくれる。知らなかった文法も教わった。授業で分からなかった数学の問題について尋ね、理解できたこともあった」と幅広く活用しているという。

 市教委学校指導課主幹の土田牧也さんはさらに「生成AIを活用した授業では、教員がより支援が必要な生徒の指導に注力できるという利点もある」と強調する。この日もそれぞれの生徒が作業に集中している間、教員が授業に遅れを取っている生徒を手厚くサポートする姿が見られた。

 一方、情報を収集するよりもAIが生成した長文の解説をノートに写す作業に時間を費やす生徒も多く、活用法には課題も残る。土田さんは「教員に質問をしづらい生徒にも、生成AIは寄り添って個別最適な学びを提供してくれる。試行錯誤しながら、一人一人の学びが充実するよううまく活用したい」と話した。

 実験は年度末までを期間とし、効果を検証した上で今後の活用に生かす。