ザル法「政治資金規正法」改正案の成立 そもそもなぜ、政治は金が掛かるのか?

AI要約

自民党裏金問題に端を発した「政治資金規正法」改正案が可決され、党内では大もめが起きた。国民の多くは改正案を評価しておらず、政治家の領収書公開への怒りが収まらない。

岸田総理が総裁選を控え、自身の政権維持を最優先し協議をすっ飛ばしたため党内不和が生じた。しかし、総理は独断で法改正を進め、周囲の要求を無視して中央突破を図った。

現在の政権には支持が広がらない要因として、今回の改正案や賃上げラッシュ、子育て支援策の不足が挙げられる。総理の自由主張も憲法21条の趣旨とは異なり、国民、党内からの不信感が募っている。

ザル法「政治資金規正法」改正案の成立 そもそもなぜ、政治は金が掛かるのか?

 安倍派を中心とした自民党裏金問題に端を発した「政治資金規正法」改正案が可決された。今は自公政権の命運をゆるがせかねない東京都知事選の真っ最中。さらに9月には岸田総理の任期となる自民党総裁選も控えている。党内の大勢は「早く国会を閉じて!」の大合唱だったことから政権にとっては一段落。約半年にわたって攻防が繰り広げられた一連の政治資金問題をわかりやすく解説するとともに、そもそもなぜ政治にはこんなにお金が必要なのかという根っこの話までひも解いてみよう。

(週刊大阪日日新聞 論説委員 畑山博史)

 「政治資金規正法」はどのように変わったのか。表に改正案の主な中身と、それに対する私の見解を加えたのでチェックしてみてほしい。

 結論を言えば、これだけ中身のないことを決めるのに自民党内は大もめ。よほどお金の流れを外部に知られたくないらしい。

 世論調査によると国民の7割は今回の改正案を評価していない。「零細事業者いじめのインボイス制度(フリーランスなどへの消費税課税強化策)はすぐやるのに、政治家は領収書すら公開しないの?」「10年後に領収書公開とあるが、所得税法などの時効が過ぎた後では意味ない!」と裏金問題への怒りは収まらない。

 法改正案でもめたのは、岸田総理が自分の政権維持を最優先して党内での協議をすっ飛ばしたから。9月の総裁選で再選されるには、党内融和より公明との連立継続が絶対条件。維新も味方につければなお心強い。

 うるさい麻生副総裁や茂木幹事長の了承も取り付けず、独断で進めたのは公明や維新の要求を隠れみのにした中央突破。他党や世論を建前にして党内を抑え込む戦術は、裏金問題の党内処分でも発揮。岸田総理自身と距離を置く安倍派や二階派を一気に派閥解散まで追い込んだ。

 自身の岸田派も同時期に解散することで〝派閥至上主義〟の麻生副総裁も揺さぶる。さらに、次世代トップをうかがう世耕・前参院幹事長や西村・前経産相らの党内処分で追い落としにも成功。現在のトップである総理自身は一切責任を取っていない。

 総理のもくろみを想像すると、「党内での反発にめげず、政治資金規正法改正をやり遂げ、同時期に所得減税も実施して一気に支持率を回復。そのタイミングで衆議院を解散して勝利し、秋の総裁選で再選される」といった流れの青写真を描いていたはずが、結局は世論も党内も支持が広がらなかった。その理由は今回の改正案が評価されていないだけでなく、今春の大企業を中心とした賃上げラッシュでも国民の生活実感が改善せず、子育て支援策もパッとしない。

 総理は野党からの追及に、憲法21条〝集会及び結社の自由〟をタテにして「政治活動の自由」を強調。しかし、この21条は〝戦前の国家権力による政治的弾圧〟を戒めるのが趣旨。政権側が「自分勝手に何でもできる」ことを担保するものではない。

 地方の自民党組織から「もう岸田では総選挙は乗り切れない」との訴えが相次いでいるが、過去の党内抗争は例外なく支持率低下を招いているだけに党内有力者も簡単には実力行使に踏み切れないでいる。

 以上が現在、永田町で起きていることを時系列でわかりやすく説明したものだが、お次はもっと根の部分「政治にはなぜ金がかかるのか?」を考えていこう。