クマ、梅雨入り遅く食料不足?人里で目撃相次ぐ 岐阜県内の民家でニワトリ襲われ、その後も出現 

AI要約

岐阜県本巣市根尾長嶺でクマの目撃情報が相次いでおり、ニワトリ被害や人身被害も発生している。

地元では猟友会が警戒し、集落でも警戒態勢が強まっている。

県内ではクマの目撃情報が増加傾向にあり、市や県も対応を強化している。

クマ、梅雨入り遅く食料不足?人里で目撃相次ぐ 岐阜県内の民家でニワトリ襲われ、その後も出現 

 岐阜県本巣市根尾長嶺の人里でクマの目撃情報が相次いでいる。18日には50代の男性猟師の自宅敷地内にあった鶏小屋のニワトリ3羽が襲われ、その後も家の近くをうろつく1頭のクマが目撃されている。ニワトリがクマに襲われる被害は全国で事例があるものの、珍しいとみられる。県内では11日に下呂市で80代の女性が子グマに襲われ、今年初めてクマによる人身被害が起きた。クマの生態に詳しい専門家は「梅雨入りが例年よりも遅かったので山に木の実などの食べ物が少なくなっているのかもしれない」と推察する。

 ニワトリが襲われたのは18日朝。豚熱(CSF)の関係でイノシシの調査捕獲に出かけていた男性のところに妻から電話があった。「クマが来て、鶏小屋を壊していった」。急いで家に戻ると、小屋の金網がこじ開けられ、中で飼っていたウコッケイの親1羽とひな2羽がいなくなっていた。穴からニワトリを引きずり出した跡があり、付近には羽根が散らばっていたという。

 ニワトリの味を覚えたのか、クマはその後も小屋付近に現れ、うろついていたという。敷地内には別の鶏小屋もある。男性は「味を占めて食べ物に執着を持ったクマは怖い。これ以上ニワトリが食べられないといいが」と心配する。

 地元の猟友会は、近くにおりを設置したほか、周辺をパトロールして警戒している。男性は「普通のクマならまず襲ってくることはないが、人里についてしまったのならもう捕るしかない」と言い切る。

 クマの出没を受け、集落では警戒を強めている。鍋をたたいて金属音を響かせながら歩く住民の姿も見られた。近くに住む所真由美さん(64)は「近くにクマが出始めたから怖い。人間に危害を加えないといいけど」と不安そうに話す。

 市林政課によると、6月に入ってから市内では8件(21日時点)のクマの目撃情報があった。市は防災無線で付近の住民に周知したり、学校施設などと情報共有したりして注意を促す。市担当者は「音が鳴るものを携帯し、1人での行動は避けて身を守ってほしい」と呼びかける。

 県内のクマの目撃情報は、数年おきに増える傾向がみられたが、19、20年度は2年続けて600件を超えた。目撃情報の多い年は人身被害も増えており、23年度は年間660件の目撃情報に対し、人身被害の7件は過去10年で3番目に多かった。本年度は12日時点で90件の目撃情報がある。

 県は、下呂市で11日起きた人身被害を受け、「クマ出没注意情報」を発令している。県環境生活政策課は「この時期や秋に出没件数が増える傾向がみられる」と話す。

 生物の生態調査に取り組むぎふ哺乳動物研究会代表の梶浦敬一さん(82)=岐阜市西後町=は、ニワトリの被害について「最近では県外で聞いたことがある」と説明。相次ぐクマの出没には「全国的にこれだけ出てくるということは単純に個体数も増えているのだろう」と話していた。