「和紙」を五感で楽しめる店…光で変わる色合い・質感を手触りで確認・原料「カジノキ」のお香

AI要約

佐賀市大和町の「名尾手すき和紙」が被災した大雨の影響で直営店を移転オープンさせた。

新店舗では和紙作りの工程を目で見て製品を手に取ることができるだけでなく、五感で楽しむ工夫も施されている。

谷口弦さんは「和紙の魅力を自由に感じてもらいたい」と期待を込めている。

 2021年8月の大雨で被災した佐賀市大和町の「名尾手すき和紙」が22日、直営店を移転オープンさせた。工房に隣接しているため和紙作りの工程を見てから製品を手に取ることができるほか、新店舗には五感で楽しむ仕掛けが施されており、七代目の谷口弦さん(33)は「和紙の魅力を自由に感じてもらいたい」と期待を込める。(小林夏奈美)

 「名尾手漉和紙」は300年以上の歴史があり、県の重要無形文化財に指定されている。繊維が長くて破れにくく、障子やちょうちんなどに使われてきた。名尾地区にはかつて100軒以上の和紙工房があったとされるが、現在は同社だけとなっている。

 同社の工房と店舗は隣接していたが、3年前の大雨で工房が被災。昨年8月、新工房を約300メートル離れた場所に設けた。旧店舗は元の場所で今月12日まで営業を続けていたが、和紙作りの工程から製品までを一貫して体感できる産業観光施設にしたいと、店舗も新工房の隣りに移した。

 新たな直営店「KAGOYA(カゴヤ)」は木造一部2階建てで、約200平方メートル。店名は和紙の原料「カジノキ」の方言「カゴ」と、紙すき小屋の「小屋」を合わせて名付けた。

 店には、視覚や触覚、嗅覚、聴覚で楽しめる工夫を凝らした。天井から100種類の和紙をつり下げ、手で触って質感を確かめられるほか、光によって変わる和紙の表情や色合いを目で見て楽しむことができる。伝統的なちょうちんのほか、クッションカバーやスリッパなど、和紙の可能性を広げるような100種類の商品例も常時展示している。

 また、カジノキの香りを抽出したお香を販売。和紙をすく音や名尾地区周辺の川のせせらぎ、鳥の鳴き声などを収集したBGMを店内に流している。現在、カジノキを使ったお茶の商品化も進めているという。

 谷口さんは「工房と店が新たな佐賀の名所になってほしい」と話していた。

 営業時間は午前9時~午後5時。工房は平日のみ見学できる。問い合わせは、名尾手すき和紙(0952・63・0334)へ。