「日本の原風景」を求めて 佐賀県内ロケ、東南アジアから続々

AI要約

佐賀県は東南アジアのドラマ・映画ロケの誘致に成功し、数々の作品が県内で制作されている。マレーシアのドラマ第1弾は人気を博し、続編も撮影された。

制作陣は佐賀の自然や風景、清潔な環境に魅力を感じ、親近感を持っている。また、飲食の配慮や撮影スポットのバリエーションも好評。

県にとっても観光振興やインバウンド増加につながる誘致効果が期待されており、マレーシアとの連携強化に注力している。

「日本の原風景」を求めて 佐賀県内ロケ、東南アジアから続々

 佐賀県による東南アジアのドラマ・映画ロケの誘致が好調だ。約10年前から誘致に力を入れ、タイ6作品、フィリピン6作品の県内ロケが実現。昨年誘致に成功したマレーシアのドラマ第1弾は同国内で人気を呼び、5月から今月初めまで県内で続編が撮影された。「SAGA」の何が、彼らを引きつけているのだろうか。

 「はい、ホンバンです!」。約3週間のロケ終盤の4日、佐賀市の佐賀駅前にマレーシア人制作陣のぎこちない日本語が響いた。

 ドラマのタイトルは「From Saga’With Love2」。県内を舞台にマレーシアの若者たちが繰り広げる恋愛コメディー(計10話)で、東南アジアや中東など16カ国・地域で人気の大手ネット動画配信サービスで今秋放映される。昨秋配信の第1弾はマレーシア国内で一時、視聴数1位となった。

 続編となった今回、5月16日から今月5日まで、県内での撮影に臨んだマレーシア側スタッフは30人超。連日付き添った県フィルムコミッション(FC)担当の楢崎政彦係長は「東京や京都などの都会や有名観光地にはない、リアルな『日本の原風景』が佐賀に多いことが魅力のようだ」。

 東南アジアでも人気の日本アニメ「となりのトトロ」などで描かれる田畑、山、海の風景のほか、一見普通だが、ごみがなく小ぎれいな住宅地や道路などにも、制作陣は深く感動していたという。撮影の合間の休みに、福岡市都心部へ短時間で遊びに行ける点も好評だった。

 楢崎係長は「佐賀の特徴を純粋に高く評価してくれる。自信を持っていいんだ、と気付かされた」と語る。マレーシアの大手国産車メーカーの普及車種名が偶然「SAGA(神話などを意味する英語)」で、佐賀への親近感が強いことも追い風となったとみられる。

 県FCは滞在経費の一部を助成するほか、生活面もサポートした。タイやフィリピンと違い、マレーシアは国民の多くがイスラム教徒で、制作陣も同様。豚肉やアルコールの飲食が固く禁じられるため、スタッフに手配する弁当や飲食店でも材料や調味料に含まれていないか「ハラル対応」を細かく確認した。

 県にとっても、訪日客(インバウンド)の増加など誘致効果への期待は大きい。佐賀市のほか唐津市の波戸岬、玄海町浜野浦の棚田、嬉野市の温泉街、有田町の窯元などで撮影され、佐賀特産・名物の日本酒やイチゴ、バルーンなどを場面に盛り込むことにも成功した。一部の出演者が佐賀大留学生の設定で、実際に同大キャンパスでも撮影。同大は「ドラマを機に大学に興味を持つ人が増えてほしい」と、マレーシア留学生の増加に期待する。

 これまでもタイやフィリピンからのロケ誘致によって両国からの県内宿泊客は大幅に増加した。県FCはマレーシアのロケ誘致でも同様の効果を狙っており、東南アジアと佐賀空港を結ぶ航空路線誘致にもつながるとみる。