【視点】玉城県政に厳しい審判

AI要約

県議選で野党・中立勢力が大勝し、玉城知事の中間評価に影響を与えた。

移設反対姿勢に加え、生活支援での実績不足が指摘されている玉城県政に対し、方向転換が求められている。

辺野古問題をめぐる分断が続く中、辺野古移設を巡る争点が後退し、生活支援が重要視されるようになっている。

 任期満了に伴う県議選が16日投開票され、玉城デニー知事を支持しない野党・中立勢力が48議席中28議席を獲得して大勝した。県議選は玉城知事の中間評価という位置づけだったが、県民の厳しい審判が下った形だ。

 玉城県政は米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に反対する姿勢が突出するが、知事選公約の給食費無償化を実現できていないなど、県民の生活支援で十分な実績を上げていない。

 県議選の結果を真摯に受け止め、基地問題を巡る政府との対決だけに偏重せず、県民生活の向上につながる県政運営を目指すべきだ。

 翁長雄志前知事が初当選し「オール沖縄」を名乗る県政が誕生した2014年以来、県議選で県政与党が敗れるのは初めてだ。

 これまで全県規模の選挙では、辺野古移設問題が最大の争点とされることが多く、それが「オール沖縄」勢力を有利にしていた。

 だが昨年、移設先の地盤改良工事を巡る裁判の最高裁判決で県の敗訴が確定し、法廷闘争を通じて移設を阻止しようとする県の戦略は暗礁に乗り上げた。その後も移設工事は着実に進展しており、選挙で移設の是非を問うことの意義は事実上薄れてきている。

 一方、物価高騰などを背景に県民の暮らしは厳しさを増しており、有権者にとっては今や、辺野古阻止より生活支援が切実な要望だ。

 県議選では与野党とも県民の暮らしに焦点を当てざるを得ず、辺野古移設の是非は大きな争点にならなかった。そのことが「オール沖縄」勢力の苦戦につながった。

 これまでの国政、県政の選挙結果を見ても、辺野古が争点化されない選挙では自公が有利になる傾向が明確に表れている。県内11市の市長がほとんど保守系で占められているのも、そうした事情を物語る。そこが「オール沖縄」勢力の限界と言えるだろう。

 少数与党となったことを受け、国との法廷闘争など、辺野古移設阻止を目指す玉城県政の取り組みは今後、極めて困難になることが予想される。

 基地問題以外にも、予算や条例など、県政のさまざまな政策が県議会を通らなくなる可能性も大きい。県政の局面は大きく変わるはずだ。

 いわゆる「裏金」問題を受け、各種世論調査で自民党の支持率は大きく下がっており、地方の選挙で自民党が支援する候補は軒並み敗れている。

 そうした中、自民党に対する視線がとりわけ厳しいと思われた沖縄の県議選で、自民公認候補が全員当選したことは、県外でも驚きをもって受け止められている。

 次期衆院選での政権交代の可能性が取り沙汰されるほど自公政権が苦境に陥っている中で、県議選の結果は、政権が反転攻勢するきっかけになるかも知れない。

 玉城知事は「辺野古反対の民意は弱まっていない」と強調した。

 だが辺野古問題を巡って10年続く県民同士の分断、政府との出口の見えない対立に、県民は疲れを感じ始めている。県議選での与党惨敗は、玉城県政に対し方向転換を促す民意のシグナルだ。