出血は痔のせいだと思ってた。37歳の若さで「大腸がん」ステージ4と診断された女性のリアルな闘病日記【書評】

AI要約

くぐりさんは痔だと思い病院を受診すると大腸がんステージ4と診断される。大腸がんの闘病生活や抗がん剤治療に苦しみながらも生きることを諦めずに前向きに取り組む。経過観察になるまで頑張り続け、夢を叶えることを心の支えに治療を乗り越える。

出血は痔のせいだと思ってた。37歳の若さで「大腸がん」ステージ4と診断された女性のリアルな闘病日記【書評】

『痔だと思ったら大腸がんステージ4でした 標準治療を旅と漫画で乗り越えてなんとか経過観察になるまで』(くぐり/KADOKAWA)は、病院を受診したときには大腸がんのステージ4になってしまっていた女性の経験を描いた作品だ。

 作者のくぐりさんは、日中は事務の仕事をして、夜は家事、深夜は絵師としての仕事をしながら毎日忙しく過ごしていた。体を冷やしながら椅子に座り続けた結果、いぼ痔になってしまい、即入院し、手術を受けることに。こうした経験から、トイレでの出血=痔という思い込みが生まれていく。

 くぐりさんは「マンガ家になりたい」という子どもの頃からの夢を叶えるため、不健康な生活をし続けた結果、またトイレでの出血が目立つように。健診で指摘されなかったこともあり、体の不調を放置していた。そして、母からの強い勧めでやっと病院を受診したときには、37歳という若さにもかかわらず「大腸がんステージ4」と診断されてしまう。さらに、肺に多発転移しているため、現時点では手術で除去できないことがわかり――。

 突然「大腸がん」と診断され、だんだんと「死」の恐怖が鮮明になっていく展開に思わず胸が締め付けられる。それでも、くぐりさんは生きることを諦めず、抗がん剤治療を受けると決意した。そして、抜け毛や味覚障害などの副作用に苦しみながらも、懸命に治療を続けていく。

 だが、そう簡単にメンタルは付いていけず、「死んでしまうのかもしれない」という不安に本人も家族も押しつぶされそうになっていた。本作では、こうしたがん患者のリアルな葛藤がまざまざと描かれている。

 くぐりさんのリアルな大腸がんの闘病生活では、夢を諦めない気持ちの底力を教えてもらえる。くぐりさんは夢だった「マンガを描くこと」と「四国八十八カ所巡りの旅」を叶えることを心の支えにし、決して治療を諦めなかった。そして、だんだんと抗がん剤治療の効果が現れはじめ、最終的に「経過観察」になるまで回復することに。

 本作を通して何より実感できるのは「体の不調を放置してはいけない」ということだ。もしあなたが今、体への不安を抱えているのなら、忙しさを言い訳にせずしっかり検査を受けてもらいたい。

文=ネゴト / 押入れの人