【ひねもすのたりワゴン生活】滋賀から城崎、そして神戸 5日間1500㎞のクルマ旅 その14

AI要約

出石で出会った杞柳細工との思いがけない出来事と、出石酒造での体験。酒粕を手に入れ、以前試みた奈良漬の手順を思い出す。

神戸へ向かう途中、130㎞のドライブで疲れを感じつつ、義姉夫妻を訪ねる。海の幸と旅の話で酒が進む。

義姉の家で100年前のバスケットが見つかり、出石で見たものと似ていたが傷んでいた。

【ひねもすのたりワゴン生活】滋賀から城崎、そして神戸 5日間1500㎞のクルマ旅 その14

 蕎麦を楽しんだら神戸に向かうつもりが、豊岡杞柳細工との思いがけない出会いがあって、出石の滞在は豊かなものとなった。たくみ工芸を出て、件の土壁に囲まれた楽々鶴の出石酒造を訪ねてみる。1708年創業の老舗は、歴史を感じさせる重厚な建物で、蔵の奥さんが笑顔で迎えてくれた。明治頃の建物ではないか…ということで、ひんやりとした空気と静けさが心地よい。試飲を勧められたものの、運転があるので泣く泣く断念。こればかりはクルマ旅の宿命だから仕方ない…。

 すると、酒粕が目に入った。以前、奈良漬を作ってみようと思い立ってその手順を調べてみたのだが、手間と時間にびっくり。ぬか漬けのようにひと晩で…と考えていたわけではないけれど、ちょっと手に負えないと断念したのだった。で、その後、いい酒粕が手に入った時の定番は、奈良漬ではなくて魚の粕漬になった。これだと、酒粕以外には味噌とみりんと多少の調味料があれば、粕床を何度も替えなくていいし、3日ほどでできる。そして抜群に美味い。出石酒造の酒粕もその香りを嗅いだだけで、期待が高まった。

 さて、残り神戸までは寄り道もせず一直線。旅の疲れが出てきたのか、距離の割に長く感じたけれど、130㎞ほどで2時間強のドライブだった。この日は、神戸の義姉夫妻を訪ねることになっていて、カーゴルームの発泡スチロールには、城崎で手に入れた日本海の魚介がぎっしり詰まっている。

 夕餉はそんな海の幸と旅の土産話で酒が進んだ。長浜、近江八幡、天橋立、伊根の舟屋、城崎温泉、出石…ぶらりぶらりと巡った旅の思い出は、酔いと共に止まらなくなる。出石のたくみ工芸でもらったパンフレットを披露しながら、その出会いの縁と作品の素晴らしさを口にした時だった…。

 “同じようなバスケットがある”と義姉が2階に上がっていった。ほどなくして、戻ってきた手には褐色の編みカゴが下がっていた。目の前に置かれたそれは、まさに大正バスケット。出石で見たものとそっくりだった。100年ほど前のもので祖母の嫁入り道具のひとつだという。見事な色艶が乗り越えてきた長い年月を思わせたが、蝶番や角々にかなりの傷みが見てとれ、このままでは使用に耐えられないだろう。聞けば、しばらく仕舞いこんであったらしい。