2ヶ月を切った米大統領選 ハリス氏orトランプ氏 対日本への姿勢はどうなるの?【親子で語る国際問題】

AI要約

米国の大統領選挙まで2ヶ月を切りました。バイデン大統領が選挙戦からの撤退を表明し、ハリス氏が後継になったことでトランプ氏優勢の流れが変わりつつある。ハリス氏が勝利した場合、バイデン政権の対日姿勢と同様の協調路線が予想される。一方、トランプ氏の勝利だと保護主義的政策や関税引き上げが懸念されるが、第一次トランプ政権の友好的な日米関係を思い起こすべき。

ハリス氏は対中対立が激化する中、同盟国との連携を重視し、特に日本との関係を重要視する見込み。トランプ氏はアメリカファーストを掲げながらも日本との友好関係を考慮していく可能性もある。

米中対立やグローバルな問題に取り組む国際政治学者が、ハリス氏とトランプ氏が日本企業に対してどのような影響を与えるか、そして日米関係の展望について論じている。

2ヶ月を切った米大統領選 ハリス氏orトランプ氏 対日本への姿勢はどうなるの?【親子で語る国際問題】

米国の大統領選挙まで2ヶ月を切りました。7月にバイデン大統領が選挙戦からの撤退を表明し、副大統領のカマラ・ハリス氏が後継候補となったことで、トランプ氏優勢の流れは大きく変わりました。これまでの世論調査では、全米でハリス氏がトランプ氏を若干リード、スイングステートと呼ばれる激戦7州においても同様の数値を示すケースが多いですが、最近ではバイデン撤退後のハリスブームにも陰りが見え始め、支持率が大きく伸びていないとの見方もあります。

現時点でどちらが勝つかは分からない状況ですが、それぞれが勝利した場合の対日姿勢はどうなるのでしょうか。

まず、ハリス氏が勝利した場合のシナリオですが、ハリス氏はバイデン政権で副大統領を務めている関係で、基本的にはバイデン政権の対日姿勢を継承することになるでしょう。バイデン政権は北朝鮮による核・ミサイルの脅威に対抗するため、同盟国の日本と韓国との結束を強化し、3カ国が一体となって北朝鮮に向き合う姿勢に徹しておりますが、ハリス氏は最近の演説で、北朝鮮の金正恩氏を念頭に暴君や独裁者に寄り添うつもりはないと強調したので、バイデン大統領のように北朝鮮で日本との関係を重視していくでしょう。

また、台湾有事や半導体覇権競争など米中間で対立がエスカレートする中、米国にとって最も重要なパートナーが日本となっています。

仮に台湾有事となれば、台湾防衛に関与する米軍の拠点は沖縄となり、先端半導体分野で日本はその製造装置で世界をリードしており、安全保障や経済など多くの分野で米国は日本との協力を必要としています。ハリス氏は同盟国との協調路線を重視するバイデン路線で、日本を最重要パートナーと位置付けるでしょう。

一方、ロイター通信が8月中旬に明らかにした日本企業向けのアンケート調査によると、ハリス氏とトランプ氏のどちらが自社の事業戦略にとって望ましいかとの問いに対し、ハリス氏が望ましいと回答した企業が全体の43%を占め、トランプ氏が望ましいと回答した企業は8%に留まりました。

トランプ氏が勝利のシナリオだと、米国の保護主義的な政策や不透明感を懸念する声が多く聞かれるとされています。確かに、トランプ氏は中国製品に対する関税を一律60%に引き上げるだけでなく、その他の外国製品に対する関税も10%引き上げると主張していますので、日本企業もその影響を受ける可能性があるでしょう。

しかし、アメリカファーストを掲げるトランプ氏ですが、政権1期目の時は安倍・トランプ時代の友好的な日米関係を経験しており、また、中国との競争に再び拍車を掛けていく上では、日本との関係を重視していく可能性が十分にあります。トランプ氏をめぐっては大きく懸念が聞かれますが、第一次トランプ政権時の日米関係を思い出し、冷静にトランプ勝利のシナリオも想定することも重要です。

ハリス氏:ハリス氏は対中国との対立が過熱しているため、同盟国との協調路線を重視するバイデン路線。日韓との関係性、米日の関係を特に重要視するとみられている。

トランプ氏:アメリカファーストを掲げ、また関税を引き上げる主張しているため、日本企業にとってはハリスの方が望ましいと思われているが、第一次トランプ政権の時の日米関係は大変友好的であった。日本との関係を重視していく可能性もある。

【記事執筆/国際政治先生】

国際政治学者として米中対立やグローバスサウスの研究に取り組む。大学で教鞭に立つ一方、民間シンクタンクの外部有識者、学術雑誌の査読委員、中央省庁向けの助言や講演などを行う。