読後はページに星座のような形が浮かぶ…たった2時間で10冊超を読了する達人が実践するスゴい"本の汚し方"

AI要約

読む準備ができたら実際に本を開きます。目次読書法とマーキング読書法の2つの技法を紹介。目次読書法は目次を読むことで新たな知識の方向性をつかむ方法。マーキング読書法は本に線を引いたり印をつけながら読む方法で、記憶の定着に役立つ。

マーキング読書法は初読でも構造を理解するメソッドで、再読時に効果を発揮する。著者の書くモデルを意識することも多読に効果的である。

読書は一度だけでなく何度も繰り返すことで理解が深まる。効果的な読書法を身につけることで、本からより多くの知識を引き出せる。

■目次を読むと自分の「未知」がわかる

 読む準備ができたら実際に本を開きます。松岡は十数冊を2~3時間で並行読みすると言いましたが、このとき使っている技法が2つあります。

 1つ目は「目次読書法」です。目次は本の間取り図であり、とくに新書はどの出版社も目次を丁寧につくっています。そのおかげで、目次を読めば、どこにどのようなことが書いてあるかおおよそ勘が働きます。

 勘が働くところは既知の内容である可能性が高く、逆に見当がつかないところは未知の内容である可能性が高い。見当がつかないのに目次を読んだだけで心惹かれる箇所は、その本との決定的な出会いになる可能性が高い。そこを真っ先に読み、そうでないところは後回し、あるいは無理に読むことはしない。そのように当たりをつけて本に向かうのが目次読書法です。

 読書経験が豊富なほうが目次読書法の精度は高まりますが、方法そのものは至極単純。今日から使える技法なのでぜひ試してください。

 使いこなすまで時間を要するものの、本の理解や速読に大いに役立つのが「マーキング読書法」です。これは本に線を引いたり、印をつけながら読む読書法です。

 読みながら傍線を引く人は少なくないと思いますが、松岡のマーキングはかなり複雑です。色は青と赤の2色。印は括弧や四角で、目的によって大きさも変えます。たとえば歴史書で赤の丸括弧は人物名、青の丸括弧はその時代固有の歴史用語です。

 その章や節で重要な概念は「キーワード」として囲みます。さらにキーワードを補足する言葉は「ホットワード」として囲み、キーワードと線で結びます。そうすると星座のような形ができて、本の内容がゲシュタルト的な像をともなって記憶に定着しやすくなります。このように本をノートにするような感覚で書き加えますが、「本は汚すもの」が松岡の持論。自分なりのルールで本を汚していきましょう。

 マーキングしていたらかえって読むのが遅くなると考えるかもしれませんが、それは本を一度しか読まない人の発想でしょう。初めてのまちを歩くとき、ナビを見るのに一生懸命で、途中にあった面白いものを見逃してしまった経験はないでしょうか。あるいは洋画を初めて見るとき、字幕ばかりに気を取られ、監督の演出に気づかなかったという経験はありませんか。実は読書も同じで、初読時は著者の言い分を直線的に受け取ることで精一杯。分析したり、構造を理解するためには、2度3度と読む必要があります。

 マーキング読書法は、初読でもある程度の構造読みを可能にするメソッドです。初読である程度の構造読みができていれば、再読の際はとても速く読めます。自分がマーキングしたキーワードやホットワードを追っていくだけでも、初読時に気づかなかったものが俯瞰的に見えてくるはずです。

 著者の「書くモデル」を意識することも、多読の助けになります。著者は生身の自分を本にさらけ出すのではなく、「書くモデル」を演じながら主張を伝えます。アメリカの認知心理学者ロジャー・C・シャンクは『人はなぜ話すのか』の中で、3つの話し手モデルを提示しました。何か説明するときにインデックスを示しながら話す「司書モデル」、ロジックで説明する「論理学者モデル」、自分の好きな話ばかりする「おじいさんモデル」です。書く場合も同じで、著者は何かしらのモデルを体現しながら本を書いているとみなすのが松岡の方法論です。