「ピザの配達が遅れたから土下座しろ」と迫る客…それでも「絶対に土下座してはいけない理由」とは?

AI要約

カスタマーハラスメントの一形態である土下座要求について、法的な観点から対処方法を解説。

土下座を強要する行為は脅迫罪や強要罪に当たる可能性があり、名誉毀損罪も成立する可能性がある。

カスハラを行う客の心理や特徴について、自己正義感や弱い立場を選ぶ傾向に言及。

「ピザの配達が遅れたから土下座しろ」と迫る客…それでも「絶対に土下座してはいけない理由」とは?

客からの迷惑行為「カスタマーハラスメント」、いわゆる「カスハラ」が横行しています。弁護士ドットコムにも、カスハラの被害に遭ったという相談が多く寄せられています。あるピザ店でデリバリーのアルバイトをしていたという人から、土下座させられたという声が寄せられました。

相談者によると、ピザの注文を受けて客に届けたところ、客が想定していた時間よりも遅れていたといいます。何度も謝罪しましたが、「行動で示せ! 土下座しろ!」と繰り返し詰め寄り、土下座させられたそうです。

ほかにも客に土下座を求められたという人からの相談が寄せられています。従業員に土下座させるという過度な謝罪の要求は、罪に問われないのでしょうか。また、土下座を要求してくる客にどう対応したらよいのでしょうか。

カスハラ問題に詳しい能勢章弁護士に聞きました。

――土下座を要求するという行為に違法性はないのでしょうか

罪に問われる可能性があります。

単に「土下座しろ」と言うだけでなく、「土下座しなければ腹を蹴るぞ」とか「土下座しなければ店を壊すぞ」といった身体や財産に対する害悪の告知があった場合には、脅迫罪(刑法222条)が成立する可能性があります。

また、土下座という義務のないことを命令する行為にも当たりますから、強要罪(刑法223条1項)が成立する可能性もあります。

なお、土下座する姿を撮影してそれをSNSにアップし、「時間通りに配達できない最悪な従業員に土下座させた」といったコメントをした場合には、公然と事実を摘示して従業員の名誉を棄損したと言えますから、名誉毀損罪(刑法230条1項)が成立する可能性もあります。

――土下座を要求する行為は、カスハラの一つのパターンですが、その背景にはどのような客側の心理や問題があるのでしょうか

カスハラを行う客には、「独自の正義感をもっている」、「言いやすい相手や会社を選んでいる」という特徴があります。

この場合の正義感とは大抵身勝手で歪んだものなのですが、本人の中ではそれが軸として揺るがない強固なものとして確立しています。そのため、従業員側が何を言っても説得には応じないし、なかなか引き下がらないという傾向があります。

また、カスハラを行う客は、誰彼ともなくクレームを言うわけではありません。自分よりも立場の弱い人や言いやすい会社を選んでいます。

例えば、スーパーなら男性従業員よりも女性の従業員に対して、病院なら医師よりも受付窓口の職員に対して、カスハラ行為を行うことが多いのです。常に自分が優位な立場に立てる状況でクレームを言ってくる傾向があります。