インドネシアのキャリイは軽トラじゃない!? インドネシア・モーターショーのスズキ・ブースを探索

AI要約

インドネシア国際オートショー2024で展示されたスズキの注目車両はハイブリッド車や電動化を推進する取り組みが目立った。

スズキのエントリーSUVとして投入された「S-PRESSO」は、日本の軽自動車技術を活かした小型クロスオーバーであり、装備も充実している。

現行型のスズキ・キャリイは、インドネシアを含むアジア圏で小型商用トラックとして活躍しており、強固な存在感を示している。

インドネシアのキャリイは軽トラじゃない!? インドネシア・モーターショーのスズキ・ブースを探索

現地生産も多い日本車が圧倒的なシュアを持つインドネシアで、2024年7月に開催されたインドネシアの国際モーターショー「ガイキンド インドネシア国際オートショー2024」(GIIAS2024)。インドネシアで現地生産台数を行っているスズキは生産、販売ともに好調で、昨年の現地での生産台数は約11万台、新車販売台数は約8.1万台。インドネシア国内でのランキングはそれぞれ、5位と4位につけている。

◆電動化が目玉のひとつ

インドネシア・モーターショーでのスズキ・ブースにおける目玉のひとつは電動化だ。ジャパン・モビリティショー2024でもお披露目された電気自動車=バッテリーEV(BEV)のコンセプトSUV、「eVX」をはじめ、市販車では、コンパクト・ミニバンの「エルティガ・ハイブリッド・クルーズ」、コンパクト・クロスオーバーSUVの「XL7ハイブリッド」、フラッグシップ・コンパクトSUVの「グランドビターラ」の3車種のハイブリッド車を展示した。いずれもマイルド・ハイブリッドであるが、インドネシアでも、政府がEVへの施策を打ち出していることもあり、エコカーへの関心は高まっているようだ。

◆スズキ エスプレッソ

スズキのエントリーSUVの役目を担う、新興国向けの小型クロスオーバーが「S-PRESSO」(エスプレッソ)だ。2019年9月にインドでデビューしているが、インドネシアでは、2022年8月に投入されている。日本で例えるならば、激安仕様のハスラーといった感じだ。

実は、プラットフォームは日本の軽自動車用「Kプラットフォーム」を使用しており、スズキの軽の技術が活かされている。ただ海外専売車ということもあり、ボディ・サイズは、全長×全幅×全高=3665×1520×1565mmと軽自動車よりも大きく、エンジンも自然吸気仕様の1.0リッター直3エンジンを搭載している。トランスミッションは、5段MTに加え、シングルクラッチ式5段自動MTの「AGS」も用意されている。

◆愛嬌に溢れるエクステリア

インドネシア仕様は、モノグレードで、意外と装備が充実。エアコン、7インチのディスプレイ・オーディオ、ステアリング・スイッチ、フロント・パワーウィンドウ、電動調整式ドア・ミラーを標準化。ちなみに、リア・ウィンドウは今や貴重な手動式だ。安全装備については、日本では常識的なものだけとなるが、デュアルSRSエアバック、リア・パーキングセンサー、ABS、ESPが備わる。

エクステリアはひと昔前のアルトの商用バンに通じるシンプルさだが、オレンジ、レッド、ブルーといったポップな色を用意。そのデザインは愛嬌に溢れている。カスタマイズのベース車としても、面白そうだ。価格は日本円で160万円前後。

◆スズキ・キャリイ

日本では軽トラックの代表格のひとつである「キャリイ」だが、海外向けモデルでは、なんと小型トラックに出世して活躍中だ。現行型は、2019年4月にインドネシアで発表。それ以降、アジア圏の各国で展開されている。

ボディ・サイズは、全長×全幅×全高=4150×1675mm×1870mm(フラットデッキ仕様)の小型商用トラックなので、軽のキャリイと比べる貫禄を感じる。フロントまわりはシンプルな角目ライトのマスクを採用。内装はデザインや質感だけでなく、エアコンやオーディオがオプションという質素さ。さらにパワートレインは、1.5リッター直4エンジンとインパネシフトの5段MTだけという潔さだ。

◆架装したコンセプト・モデルを出品

モーターショーでは、コンセプトEVの「eVX」に給電可能なサービスカーとしてカスタムされたコンセプト・モデルを展示。LED式ヘッドライトやグリルガード、メンテナンス用の工具セットやコンプレッサー、EV充電機能などを備えていた。このモデルには、これからEVインフラの整備が必要となるインドネシアのユーザーに対して、EVの不安を払しょくしたいという狙いもあるのだろう。また、カフェ・カーに改造された別のキャリイは来場者にドリンクをサービスし、活躍していた。

◆グランドビターラ

日本では、今年の4月に販売が終了した「エスクード」の事実上の後継車として、「フロンクス」の登場が予告されているが、インドネシアには、ひと回り大きいエスクード級のSUVが存在する。かつてエスクードの海外版のひとつとして活躍したグランドビターラだ。ただ2022年にインドで発表された現行型は、かつてのエスクードのバッチ違いではなく、トヨタとの協業で生まれたオールニューモデルで、開発をスズキが、生産をトヨタが担当するというユニークなモデルである。

ボディ・サイズは、全長×全幅×全高=4345×1795×1645mmで、マイルド・ハイブリッド仕様の1.5リッター直列4気筒エンジンに、6段ATを組み合わせている。インドネシア仕様は、前輪駆動車のみとなる。スズキのフラッグシップ・モデルとなるだけに、装備も豪華だ。最上位グレード「GX」では、電動ガラスサンルーフ、ヘッドアップ・ディスプレイ、9インチ・ディスプレイ・オーディオ、レザーシート、360度カメラ、スマートフォン・ワイヤレス・チャージャーなども標準となる。

◆オーソドックスなSUVフォルム

SUVクーペ・デザインのフロンクスに対して、オーソドックスなSUVフォルムを採用しているが、個性的でシャープなフロント・マスクが、エネルギッシュかつスポーティな印象を与えてくれる。内装もフロンクスとテイストが似ているが、室内幅と室内長さ共にゆとりがあるため、快適性も高そうだ。

エンジンの出力はほぼ同等だが、100kg+αの重量増があるので、スポーティな走りでは、フロンクスに譲るだろう。現地価格は、約340万円~360万円となっている。

◆ハイブリッド車の人気が上昇

モーターショーの会場内で行われた試乗会では、今年2月に発表されたジムニー5ドアが、スズキの中では一番人気だったが、最新の7月の販売状況では、都市部ではハイブリッド車の人気が高まり、7月の乗用車販売のうち、ハイブリッドが43%を占めたという。

現状のエコカー政策は、BEVのみだが、業界団体がハイブリッド車はEV移行の橋渡しとなる存在というアピールに対して、政府がハイブリッド車への優遇政策も検討しているとの情報もある。その施策が打ち出されれば、手頃なハイブリッド車を用意する、スズキ車の販売にも、弾みが付きそうだ。

文・写真=大音安弘

(ENGINE WEBオリジナル)