Z世代は自分の殻に閉じこもる? 彼らが「孤独」を好む理由とは

AI要約

若い世代であるZ世代が心の平和を大切にし、ひとりでいることや安全な場所を求める傾向が強い。

Z世代は感情が細やかで、自分の気分や関係に気を配り、有害だと感じるとすぐに逃げ出す傾向がある。

仕事においても自己主張よりもセルフケアを重視し、合わない環境ではすぐに辞める姿勢が見られる。

Z世代は自分の殻に閉じこもる? 彼らが「孤独」を好む理由とは

人とすぐに繋がることができる時代となったのに、自分の殻に閉じこもるZ世代の若者が増えている。Z世代とはどんな世代なのだろうか?

「#protectyourpeace」というハッシュタグを見たことはあるだろうか。「心の平和を守ろう」という意味だ。

「自分の心の平和を守ることは、無言で相手を無視してバツの悪い思いをさせることでも、人を避けることでもない。それは孤独の空間で、自分がなにを必要としているかを悟り、自分を取り戻すためのもの。そこでは他人に言い訳する必要もない」と26歳のケイシー・モリナ(TikTok@caseyishealing)は語る。

彼女に限らず、このハッシュタグを使う人は多い。TikTokだけでも2億7000万回以上のビューがある。心の平和を守ることはZ世代、すなわち20代から30代の若い世代にとっていまやひとつの使命のようになっている。

あえてひとりでいることにZ世代は憧れ、共感する。ひとりの時間こそが安全でくつろげる場に感じるからだ。ジャーナリストであり、『Jeunes et Stylés(原題訳:若くてスタイリッシュ)』の著作もある26歳のオーギュスタン・ブグロは、動画投稿を通じてそのことを感じている。

「ひとりで映画館などへ出かける動画を公開すると、すぐに若い子たちから共感のメッセージがくる。カップルというものが重視されるこの社会で、僕の撮る世界に彼らは惹かれるようだ。メッセージには、動画を見てほっとした、あなたのアカウントは自分たちのセーフ・スペースだ、などとある」と語った。

セーフ・スペースや心の平和にこだわるZ世代は、上の世代と比べて孤独が好きなのだろうか? 「この世代は、ひとりで何かに打ち込むことが好きだ」と、臨床心理学者のジョアンナ・ロザンブリュムは言う。彼女は『Déconditionnez-vous!(原題訳:心理的抑圧から解放されよう!)』(Trédaniel刊)という本の著者だ。

Z世代に人気のあるインフルエンサーを見ればなんとなく傾向がわかる。たとえばローラ・パスケ(@lauratravelbook)は、花が咲きみだれる庭や水彩画、スイスの山でのハイキングなどの写真を、ジブリ映画の美しい音楽をBGMに投稿している人気インフルエンサーだ。ジャーナリストのオーギュスタン・ブグロは、彼女の人気をこんなふうに分析する。「若い子たちは彼女のことが大好き。ヒステリックな一部のSNSの真逆をいく、まるでおばあちゃんのひとり暮らしのようだからだ」

Z世代の目指すライフスタイルのキーワードは、美しい、スロー、ソロ。そして心の平和がおびやかされそうになると、外の荒波から身を守ってくれる安全な場所に潜りこむ。

「争いを好まない世代だ。感情がとても細やかで、関係がうまくいっていないことに気付くとすぐに、自分の気分という、主観的な内的判断基準に頼る。"自分の気分はどう? 自分は大丈夫?"とね」と言うのは、『La Génération Z aux rayons X(原題訳:X線にかけたZ世代)』(Éditions du Cerf刊)の著者である人類学者のエリザベス・スーリエだ。答えがノーなら、そしてその関係が自分に有害に思えたら、とっとと逃げ出す。相手が恋人であれ、友人であれ、会社であれ。

「母は25年間も仕事に耐えてきたと言う。耐えなきゃいけない職場にずっと留まるなんて、自分には考えられない。同世代には、いい学校を出たのに上司との関係がわずらわしい、上下関係のいざこざにまきこまれたくないと、生きていくための最低限の仕事しかしない人が結構いる」とジャーナリストのオーギュスタン・ブグロはZ世代らしい気持ちを素直に語った。

会社が合わないと感じたら辞めるのも早い。「自分がないがしろにされていて、誰にも守ってもらえないと感じたら、辞める選択をするかもしれない。この世代は権力志向でもなく、自己主張したいのでもなく、セルフリスペクト、自分を尊重することに重きを置いている」と人類学者のエリザベス・スーリエも言う。この世代にとって重要なのはセルフケア。だからちょっともめただけですぐに関係を断ち切り、殻に閉じこもる。