生後間もなく闘病生活に「妹がなぜ」姉の罪悪感と不安…手に入れた“絶対的な味方"

AI要約

福岡県・福岡市難病相談支援センターが、重い病気や障害のあるきょうだいを持つ子どもをサポートするためのオンライン講座を開催。

病気や障害のあるきょうだいに焦点を当て、当事者や識者が子どもの感情や悩みを紹介し、周囲の大人の寄り添いの重要性を強調。

病棟保育士の経験を持つ吉原由香利さんのエピソードや専門家の意見から、家族や周囲が子どもをどうサポートすべきかが探られた。

 重い病気や障害のあるきょうだいを持つ子どもをどうサポートすればいいのか-。こうしたテーマで福岡県・福岡市難病相談支援センターが7月24日、オンラインの公開講座を開いた。家族の関心が病気や障害のあるきょうだいに集中しがちな環境で、子どもが抱きやすい感情や悩みを当事者や識者が紹介。周囲の大人が寄り添う必要性について話し合った。

 講座では、福岡市立こども病院で病棟保育士を務める吉原由香利さんが、妹に病気が発覚した当時の心境を語った。11歳下の妹は生後間もなく闘病生活となり、吉原さんは「何か恐ろしいことが起きている」と不安に襲われ、「私ではなく、小さな妹がなぜ病に…」という罪悪感にもさいなまれたという。

 家族の生活は一変し、母親は病床の妹に付き添い、父親もそのサポートに追われた。祖母の世話を受けるようになった吉原さんは「自分の役割は家族を和ませ、励ますことだと考えた」。当時、母親と続けていた交換ノートにも「妹の病気にまつわることを書くと母がつらい思いをするから、本当に言いたいこと、聞きたいことではなく、たわいもないことを書いた」と振り返った。

 そんな中、心の支えとなる心理士と出会った。妹が快方に向かっているのか分からず「自分のせいで妹の病状が悪化しているかも」と悩んでいた頃、心理士から「あなたのせいじゃない」「もう頑張らなくていい」と励まされ「絶対的な味方を手に入れた」と感じたという。病棟保育士のおかげで妹が病院でも笑顔でいることも知った。

 自身が病棟保育士になった今、患者家族からきょうだいの病気を幼い子どもにどう伝えればよいか相談されることがある。遊びを通して病気の子などを支える「ホスピタル・プレイ・スペシャリスト」の民間資格も持つ吉原さんは、子どもを主人公とした絵本を作り、病気を分かりやすく説明していることを紹介した。

 名古屋大大学院の新家一輝教授(看護学)は、親や周囲の目が病気の子や障害児にばかり注がれ、子どもを輪の外に追いやってしまうことがあると指摘。自己肯定感や自尊心が下がり「自分だけ楽しんでいいのか、という自責の念にかられやすい」と語った。

 福岡県筑後市社会福祉協議会の卜部善行・地域福祉係長は、親や周囲を心配させまいとする子どもが少なくないことから「『困ったことがあれば相談して』ではなく、困っていなくてもつながる姿勢が大事だ」と強調した。 (鶴加寿子)