“全体の復旧に15年程度かかる”地震で甚大な被害の金沢城公園の石垣…能登の七尾城では地震で新たな歴史的発見も

AI要約

石川県金沢市で能登半島地震による被害が生じた金沢城公園と兼六園の石垣の復旧には15年程度かかる見通しが示された。

七尾城跡も被害を受け、危険な石垣にはアンカーとネットを用いた修復が検討されているが、歴史的価値を考慮して再検討が求められている。

復旧作業における安全性と歴史的な価値の両立が課題となり、対応には慎重な議論が必要とされている。

“全体の復旧に15年程度かかる”地震で甚大な被害の金沢城公園の石垣…能登の七尾城では地震で新たな歴史的発見も

国内外から多くの観光客が訪れる石川県は金沢の街。金沢城公園や兼六園は目玉となる観光スポットの一つだが、能登半島地震で大きな被害を受け、全体の復旧には少なくとも15年程度かかるという見通しが示された。

金沢城公園と兼六園について、地震で崩れるなどした石垣の復旧について話し合う会議が開かれ、全体の復旧には少なくとも15年程度かかるという見通しが示された。この会議は石垣や地盤工学の専門家など5人の委員が参加し、能登半島地震で崩れた金沢城と兼六園の石垣の復旧方針などについて意見を述べた。

この日は2024年4月の初会合で委員から指摘を受け策定した基本方針案が示された。石垣が様々な年代の多様な技法を用いて築かれていることから、個々の状況に応じた復旧方法の検討を行うことなどが盛り込まれている。

また工期について、まずは崩落した7ヵ所の石垣の復旧を優先して行い、3~5年程度で完了させる想定だ。ただこのほかにも23ヵ所で石垣がずれるなどの被害が発生していて、全体の復旧には少なくとも15年程度かかる見通しが示された。委員からは石垣の復旧過程を見る機会は珍しいため、安全対策を取ったうえで、できるだけ近くで見学できるようにしてほしいといった意見が出された。

一方、地震で石垣が崩れるなどの被害が発生し、中心部が立ち入り禁止となっている能登、七尾市にある七尾城跡。専門家などが視察した。七尾城跡の視察に訪れたのは、城郭研究の第一人者で「お城博士」としても知られる名古屋市立大学の千田嘉博教授など6人だ。

七尾城は能登国の守護・畠山氏が16世紀前半に築いたもので、面積はおよそ300haと全国屈指の規模を有し、難攻不落の城としても知られている。しかし元日の地震によって23ヶ所で、石垣が崩れたほか地面に亀裂が入るなどの被害が発生。2007年の地震で崩落した後、修復された石垣も、再び崩れてしまった。

「これが土に入っていた部分、奥行きがこれだけしかないんですよ。これがもっと長ければ地震のときの揺れには強いのですが、金沢城のような奥行きのある石垣になる前のより素朴な発展途中の石垣だというところに七尾城の石垣の価値があるんです」と千田教授は説明する。

七尾城の特色とも言えるこの石を積み直して当時の石垣を忠実に再現するのか、耐久性を上げるために別の石を使った石垣にするのか、復旧に当たっては難しい選択をしなくてはいけない。一方で、地震をきっかけに歴史をひもとく新たな発見もあった。千田教授が興奮気味に指し示した石垣。

実はこれ…、「当時は石垣が両方壁で門がドーンと立っていた。それが地震で土が崩れて埋まっていた石垣が見つかったことで分かったんですよ」。

視察の後に開かれた整備検討委員会で市の担当者は、通路に崩落する危険がある石垣にアンカーを打ちネットを張って修復する方針を説明した。しかし千田教授は「将来本格的に石垣の解体積み直しをするならば、もう二度と取れないというのが最適な工法かどうかは疑念がある」と指摘。

市の担当者はこうした意見を受け、七尾城跡の姿をできるだけ保存することを前提とした復旧方法を再検討したいと答えた。安全性と歴史的な価値をどう両立させていけばいいのか、議論を尽くしたうえで工事に取り掛かってほしい。

(石川テレビ)