水上タクシーがつなぐ歴史と暮らし 6本の川とともに栄えた広島 西日本の水

AI要約

広島市内を流れる川沿いの雁木が、古くから水運業の拠点として利用され、現在は水上タクシーの乗り場としても活用されている。

NPO法人「雁木組」が提供するワンコインクルージングでは、広島の景色や歴史を楽しむことができる。

広島の雁木の歴史や船からの荷揚げの様子、船旅を楽しむ市民の様子などを通して、広島の川の街の魅力が伝わってくる。

水上タクシーがつなぐ歴史と暮らし 6本の川とともに栄えた広島 西日本の水

市街地を縫うように6本の川が流れる広島市は、古くから水運業が発展し、護岸には階段状の船着き場「雁木(がんぎ)」が今も多数残る。かつて木材などの荷揚げに使われた雁木は、近年、小型ボートを使った水上タクシーの乗り場としても活用され、市民が水に親しむ場所として変わらずに生かされている。

■ワンコインで船の旅

「船が思ったより速くて、風が気持ちいい」「川から見た広島の景色は初めて」

7月中旬の夕、旧太田川(本川)沿いにある住吉神社(広島市中区)横の雁木から小型ボートに乗り込んだ4人組の女子高生が、夕日に照らされた川面の景色に声を上げた。

この日、広島三大祭のひとつである同神社の夏祭り「すみよしさん」を訪れた4人が楽しんだのは、NPO法人「雁木組」(同市)が運航する水上タクシー「雁木タクシー」のクルージング。雁木組は毎年、海の神をまつる同神社の祭りに合わせ、中学生以上1人500円のワンコインクルージングを提供している。

船長の正路太さん(67)が「雁木は広島市内に約400カ所。元々、水運で運ばれてきた木材をここで上げていました」と説明しながら船を操る。

8月6日の広島原爆の日には灯籠流しが行われる原爆ドーム対岸の「元安川親水テラス」や、最大級の「楠木の大雁木」といった主立った雁木も紹介。10分余りの船旅を楽しんだ高校2年の志水智美さん(16)=同市安佐南区=は「雁木の存在は中学の授業で勉強したが、間近で見るのは初めて。こんなにたくさんあるとは知らなかった」と話した。

■雁が飛ぶ姿

広島の川の街としての歴史は、毛利輝元が広島城を築城した16世紀末に始まる。

城下町は天然の川に加え、人工の堀や運河が張り巡らされた。川の流れが広島湾にそそぐため、海の潮位の影響で現在でも最大約4メートルの干満差があるのが特徴だ。満潮時も干潮時も船から荷揚げできるようにと、川沿いに雁木が設置された。

雁木組の副理事長、山崎学さん(70)は「当初は木組みで、雁が列を組んで飛ぶ姿に見えるので『雁木』と呼ばれ、その後、石やコンクリートに変わっていきました」という。